Ren

DEATH DAYSのRenのレビュー・感想・評価

DEATH DAYS(2021年製作の映画)
3.5
とても面白かった。圧倒的にYouTube映えする映像作品をYouTubeで観られて良かった!『そうして私たちはプールに金魚を、』に引き続き、インターネットネイティブ世代の巨匠になっていきそうな予感が十二分に感じられる良作です。

誕生日(バースデイ)のように、もし自分が死ぬ日付(デスデイ)が分かっていたとしたら?という思考実験的な作品であり、端的に言えば『世にも奇妙な物語』とか『ブラック・ミラー』のような設定で始まります。ただ前者ほどストレンジになりすぎず、後者のようなディストピアに走らず、日本らしくありながらスタイリッシュで今風なルックに仕上がっていたのが唯一無二で素敵だと思いました。非現実的なようでいて普遍のエモさもガッシリ捉えた映像の感じは、『チワワちゃん』の二宮健らしさもあると思います。

死を意識することで今ある生を尊いものとする、というメッセージ自体はありふれすぎてはいますが、これもまたかなり現代的価値観なのではとも感じました。「生きててよかった」と言うと、生きててかつ何かを成し遂げたことへの「よかった」に感じられるけど、今作では「死ななくてよかった」と繰り返す。ただ生きている(死んでいない)状態を尊ぶ人生賛歌として少なくとも完成されていたと自分は思います。
『ふしぎの国のアリス』ではUnhappy Birthday(何でもない日おめでとう)という文言が繰り返されますが、まさにそれに近いな、と。

そんな中で「蕎麦のほぐし水」やら「俺の風の宣伝トラック」といったマニアックすぎるモチーフで観客をくすぐってくるセンスも◎。
日本のみならず、世界中の人に観てみてほしいな。
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