MasaichiYaguchi

魂のまなざしのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

魂のまなざし(2020年製作の映画)
3.7
モダニズムを代表する画家の一人、フィンランドの画家ヘレン・シャルフベックの伝記映画は、彼女の画業と人生を決定づけた1915年から1923年の8年間をドラマチックに描く。
1915年、高齢の母親とともに田舎で暮らす画家のヘレン・シャルフベックは、世間からはすでに忘れられた存在だったが、湧き出る情熱のために絵を描き続けていた。
そんな彼女のもとに或る画商が訪ねてきたことから、運命が大きく動き出す。
この画商、ヨースタ・ステンマンは彼女に二つのことをもたらす。
一つは彼女の家にあった159枚の絵を発見し、ヘルシンキで大規模な個展を開催して彼女に成功をもたらす。
そしてもう一つは、彼女にとって掛け替えのない友人で愛の対象となる森林保護官でアマチュア画家の青年エイナル・ロイターを引き合わせたこと。
フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックは、ロシア帝国の支配下にあったフィンランドに生まれ、祖国の独立と内戦で封建的社会が崩れていく中で、画家として、女性として、一人の人間として自律的に生きていく。
だから彼女は、抑圧的な母親や男性社会に臆せず、名声よりも自らの湧き出る情熱で行動する。
時に挫折や失意の中にあっても、凛として人生を歩む姿を、本作は美しい北欧の自然と共に描き出していく。