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エンパイア・オブ・ライトのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.1
映画館で観るべき映画ってこういう映画だよな。

"1917 (2019)"で世界に衝撃を与えた、いまや映画界のトップを走るSam Mendesの最新作。心に小さな光が灯される映画。

1980年代のイギリスのシアターが二つしかない小さな映画館が舞台で、当時の社会的背景を映しながら、社会不適合者の烙印を押された2人の不思議な関係を描く。

今年は映画の映画が多いね。
コロナで、映画界が落ち込みはじめたあたりから企画が始まったんだろう。映画ってこんなに尊くて、作っている側から愛が溢れている、みているだけで監督のシワの多い笑顔が透けて見える映画。
映画好きからすると、こちらも幸せになるよね。

はい。お待たせしました。
Sir Roger Deakins。もうSirついてるからね。レジェンドもレジェンド。この人が撮る映画は映画館で観なくてどうする。
今回の映画、テーマはもちろんLight。画面のセンターに配置されるていて、暗喩とかシンボルとか、メタファーとかじゃなく、マクガフィン的に中心に置かれるLight。映画に命を吹き込む映写機の光源。その光は、映画館に足を運んで、映画を観る人の人生にも光を灯す。
こんなに真っ正面から光を捉えるなんて、かなり度胸いると思うけど、全く物怖じしてない。あたりまえか(笑)。序盤から中盤にかけてはHilaryの日常を描く、Hilaryの生きる環境を描く光の使い方。中盤から後半にかけては、HilaryとStephenの関係を描く光の使い方。その全体を覆いつくす、時代を描く光の使い方。すごかったな。

1917で虜になったのか、イギリスっぽいのかな?ドン曇りの空。これ、めっちゃ贅沢なことやってるよほんとに。ドン曇りって、そもそも天候待ちっていうのが出てくるし、ドラマを作り出すのが難しい照明。
空全体が照明の役割をして、分散する光によって、全体が均一に照らされるため、ペラッとしちゃう。陰影がつかず、AO(Ambient Occlusion)だけしか空間を担うものがないから、映画っぽさって出ないと思うんです。
そこを、逆行しないっていう決意。そのドヨーンとしたドラマの欠落はHilaryの日常を表現している。昼と夜の表現で躁鬱の状態を描き、それにあらがう、社会に争わざるを得ないHilaryの感情をドン曇りで描く。
Lightがセンターにある映画で、この天候の選択ができるのは、これまで作ってきた映画が確実に経験となり、引き出しを増やしているからだろう。

今回は、Alexa miniでの撮影。機動力とか必要ないのに、この選択も面白い。65とか使いたくなるし、トレンドはそっち。いや、ちがう、今のトレンドは、Super35だ。なんなら、Roger Deakinsがトレンドを作っていることを忘れてはいけない。Alexa35が映画のスタンダードになる日もすぐ近くだろう。

Olivia Colmanは主役以外できんのかってぐらい感情の複雑さの表現の幅がえぐい。顔の筋肉の使い方が、えぐすぎる。
Toby Jonesも良すぎる。声もめちゃかっこいいし、眉毛がガンガン動く。

Sam Mendesはいろんなことができるんだな。次回作が楽しみ
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