卵

エンパイア・オブ・ライトの卵のレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.0
映画では1秒に24コマ光る静止画を差し込むと黒い画面は見えなくなるけど、現実ではいくら幸福な出来事があってもその間に挟まる暗い記憶を消し去ることはできない。ヒラリーが映画を1人で見るシーンの落ち着いたカメラワークが良かった。メインBGMも好き

他のユーザーの感想・評価

ch

chの感想・評価

-
映画を見るって心に余裕がないと出来ないことだな。確かにって気付かされた。
演技、景色、音楽などとても良かった。
自分映画好きだなあっておもった。
静かだけど、じんわり心に感じるこの空気感すき
矢嶋

矢嶋の感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

映画館を舞台とした穏やかなふれあい…みたいな雰囲気を予想してたので、結構面食らった。
ヒラリーもスティーヴンも社会からのかなり切実な疎外があり、割と重い話が続く。ここで少し残念なのが、それぞれの話が上手く接続されていないように感じて、二人がくっつくための材料のようにも見えた。
特にヒラリーは、エリスが糞なのは分かるとしても過去にどういったことがあったのか今一つ分からない。結果、同情はできるがヒステリック過ぎて実際精神的な問題があるようにも見える。

よかった点として、ビジュアル面は全体的に魅力的だった。特に終わり方は画として非常に美しく、それまでの重苦しい印象を覆すものだった。

それに、なんと言っても映画館という舞台自体が素晴らしい。鳩がいた階の寂しさも営業しているフロアの華やかさもよかった。映写機を回すくだりはワクワクするし、ヒラリーがようやく映画を見るシーンも印象的だ。
正直、映画館という設定をもっと積極的に活かせばいいのにとも思った。例えば、彼女が映画を見ることをやけにもったいぶっていたのは何故なんだろう。過去の傷が、映画そのものを忌避することと繋がっていればより納得できただろう。

ビジュアル面以外では音楽も魅力的であり、総じて雰囲気作りは巧み。
役者もトビー・ジョーンズの渋みのある演技や、オリヴィア・コールマンの豹変ぶり等、皆いい仕事をしていた。

脚本にはやや乗れなかったものの、魅力も随所に感じられる作品だった。
GENOKEN

GENOKENの感想・評価

3.4
80年代サッチャー政権下のイギリスの海辺にある映画館が舞台。文字通りサム・メンデス監督の映画愛が捧げられた一作。情緒不安定な女性を演じれば右に出る者はいないオリヴィア・コールマンの無双状態。この頃続く"映画監督による映画論"としても興味深いが、テーマを盛り込みすぎた感が強く、消化不良な部分は否めない。
観る前はそんなに食指動かないな〜とか思ってたけど大当たりだった。優しい映画。
映写機のあまりのコマの速さによって人がそのコマの間にある暗闇を認識しないように、人の心にある影は他人から認識されづらい部分に潜在していて、フィルムのように擦り切れていつしか存在ごと消えてしまうような気がしました。
けれどもこの作品はその暗闇で踠きながらも居場所を見出していく美しさや、そこに光を与えてくれる人々の優しさが垣間見えてとても素晴らしかったです。
ヒラリーが見る映画から発された"Life is a state of mind"と言うセリフ、めちゃくちゃ救われました。
shin

shinの感想・評価

3.7
サム・メンデス監督最新作。


序盤からどのカットどのシーンも画がいい。
それだけでも結構満足度は高かった。

オリヴィア・コールマンの演技力に改めて脱帽。
静と動の落差がすごいし、それもあって動の時の迫力がすごい。
根は良い人そうで一緒にいると安心感も感じるけど、どこか脆さというか不安定さを常に肌で感じさせられるのがもう圧巻。

メインはヒラリーの視点だが、うまくスティーブン視点も加わるのが良かった。
そのおかげで人との出会いで人生を楽しめるようになったという主観だけでなく、それは相手もそうだったりするんだよというのがより感じられた。

ヒラリーに限らず他のキャラクターも出番は少なくとも良い味出していた。
コリン・ファースが良い人ではない役を演じていたのは思いもしなくてある種楽しめた。
映写技師ノーマンは特に良いキャラだった。

1980年代の映画、イギリスの社会情勢にも触れられている。
20230301

「エンパイア・オブ・ライト」

評価項目 今回から点数ちゃんと付けてみます
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ストーリー 5/7点
テーマ 5/7点
構成 5/7点
演技 6/6点
映像 5/6点
音楽 4/6点
独創性 3/4点
キャラクター 4/4点
趣味 0/2点
リピート 0/1点
印象 ±0/3点
合計 37/50点
※主観です!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以下感想

辛い境遇の2人が交差して、幸せを見つける.
だけど時代が再び2人を絶望に追い込んだ後に、もう一度立ち上がるきっかけになるのが映画なのが素晴らしく美しい.

そしてそこに至るまでに見せられる映像美と音楽性の高さが作品を滑らかに繋いでいる印象を与えた.オリヴィアコールマンはじめオスカー級のキャストが揃っていることもあり、各シーンやセリフに重みや真実味を感じることが多かった.

個人的には負の感情を強く感じる瞬間は結構多かったが、感動したり笑顔になるような瞬間はほぼなかったと思う.しかし最後は心が落ち着き、晴れやかに前向きに明日を迎えようと思える作品であった.

「映画を観ている時は現実を忘れられる」
「人生は心の在り方だ」
親子ほど歳が違う白人女性と黒人男性の交流が、80年代の素敵な映画館を舞台に、美しい光と共に描かれていました。

正直、主軸となる二人の関係性は個人的にあまり興味がわかず。背景に描かれる黒人への差別意識の強さも、既視感があったり中途半端な印象。
それでもこの作品を観て満足度が高いのは、80年代の映画館が醸し出す素敵な空気感と、そこで働く従業員(エリスを除く)の普通っぽい中にある優しさや思いやりが心地よかったから。
昔ながらの映写室で映写機を扱う技師さんの所作って、どうしてこう心に響くのでしょう…。

映画って、本当に良いものですね。

このレビューはネタバレを含みます

・最近の映画賞賛劇とは違って、ドラマの中に映画がある『ニューシネマパラダイス』タイプだった
・劇伴がイメージを増幅させていた
・少しテンポが良くて残念。心情ドラマも会話や出来事が先行していてイマイチ掴みづらかった
今まで観てきたサム・メンデスの映画の中では、これが一番好きです。正直なところ学生時代に『レボリューショナリーロード』でトラウマを植え付けられた自分としては「サム・メンデスがラブ・ストーリーを撮る」と耳にして「ウゴゴッ」な気分になったんですが、覚悟して観に行った結果、杞憂でしたね。めっちゃイイ話やん。

主人公は白人のおばちゃんと、黒人の若い男。映画館のスタッフとして働くこの二人のラブ・ストーリーが主軸になっていますが、根底に描かれているのは「映画」ということで、ラブ・ストーリーというよりかは「ラブ・ムービー・ストーリー」……21世紀の『ニュー・シネマパラダイズ』のような感覚を受けました。

ここに感想を書いている人のほとんどが映画が大好きな方々だと思うんですが、どんなに素晴らしい映画を観たからといって、その人の現実世界が大きく変わるかというと、そんな機会は少ないと考えるのが自然でしょう。愛や平和について語る映画がこの世にはごまんと溢れているけれど、世界は愛に満ちてないし、平和からは程遠い。個人的なスケールで考えてもそう。どんなに素晴らしい映画を観たからといって、イヤな上司は消えてくれないし、いじめはなくならないし、体重は増えるし、タバコは止められない。人種差別はなくならないし、壊れた精神が元に戻るわけでもない。

「どれだけ素晴らしい映画を観ても、現実は変わらない」ことを、無意識のうちに私たちは感じている。でも、それでも私たちは映画を観る。なぜか。それは「夢」を観るのと同じなんだと、この映画は語っている。普通の夢と違うのは、それが「現実の世界と地続きになっている夢」ということです。映画館というある種の「異界」で、暗闇の中を切り裂いて現れる光の映像。あるいは、連続する光の帯の只中に、一瞬だけ顔を覗かせる闇。これが夢でなくてなんだというのでしょうか。

どれだけ現実が悲惨なものになろうとも、どれだけ人生が苦境に立たされようとも、たとえ素晴らしい映画を「観た」としても辛い現実が変わることなんてないけど、それでも私たちは「映画」という「夢」を見続けることが出来る――その素晴らしさを、しっとりと上品に、それでいて力強く謳い上げるサム・メンデス。『アメリカン・ビューティー』や『レボリューショナリーロード』において、ままならない現実を痛烈なタッチで描いてきた彼が、こんな感動作を仕上げるとは思いませんでした。キャラクターたちが直面する現実の厳しさを痛烈に描きながら、それでも人間の「映画を観る力」すなわち「夢を“観る”力」を信じて、まぁなんとかなるから頑張っていこうよと、自然と肩に手を置いてくれるような映画。それこそが、私にとっての『エンパイア・オブ・ライト』です。とても大事な映画。ぜひ、多くの人に観て欲しい。
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