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エンパイア・オブ・ライトのasamiのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.0
『エンパイア・オブ・ライト』
映画館にて視聴。
名匠サム・メンデスが脚本・監督。
寂れた映画館を舞台に、名優オリビア・コールマンを主演に迎えて描いたヒューマンドラマ。


・
1980年代初頭のイギリス。
海辺の町の映画館・エンパイア劇場。
フロアの責任者として働く中年のヒラリー。
恋人も家族もいない孤独な彼女だが、
映画館で働く仲間たちは優しく彼女を見守っている。
一方で映画館の支配人エリスは彼女の孤独と立場につけこみ、性的関係を強いていた。

そんなヒラリーの前に、大学進学を諦めて映画館で働くことを決めたアフリカ系の青年スティーヴンが現れる。
ヒラリーはスティーブンの美しさと優しさに惹かれていく。
スティーブンは未来への不安、人種差別の空気が高まっていくことへの恐怖を感じていた。
一方のスティーブンも孤独なヒラリーの時たまみせる輝きや知性に惹かれ、2人は少しずつ心を通わせていく。


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新星・マイケル・ウォードが眩しい。
悲しみと優しさが宿る眼差しが美しかった。
すごい新人が現れた、とびっくりしました。
オリビア・コールマンとのケミは大成功ですね。

それから、この映画の妖精、映写技師のノーマンを演じたトビー・ジョーンズが最高でした。
まるで映写室を映画と、彼自身の過去の神殿にしているよう。
悲しげなノーマンの佇まいと相まって、
まるで彼はこの映画館そのものだった…。
コリン・ファースは今作あまり目立たない。
本当にトビー・ジョーンズが良かったです。

そしてオリビア・コールマン。
もう彼女の独断場。
表情一つ、肩の角度一つで、
10老けたり10若返ったりする。
彼女がいるだけで、作品の見応えが約束されるのがわかりますね。
マイケル・ウォードとはオリビアは25歳離れているのに、スティーブンがオリビアに惹かれるのがわかります。



映画館という場所を舞台にして
ストーリーは進んでいきますが、
ヒラリーは映画の魅力を知らずに映画館で働いている。
映画の魔法を1番知っているのはノーマンで、
映写室にスティーブンを招き入れてからは
スティーブンも映画に魅入られていく。
ノーマンがスティーブンに話す、光と暗闇の話が良い…全映画好きさんに聞いてほしい。

そして辛い事件を乗り越えたヒラリーの
癒しになるのも映画の暗闇と光の魔法。

サム・メンデスは本当に映画の力、
映画館にある魔法を信じているんだな、
と思いましたし、
近年いくつか作られている、映画愛を語る映画の中でも、私は1番感動しました。

撮影は「1917 命をかけた伝令」でもサム・メンデスとタッグを組んだロジャー・ディーキンス。
寂れた映画館の、今は使われていないフロアから見るほんのりと桜色の景色。
花火を見上げる2人の横顔。
鮮やかな海辺のシーン。
美しかった…

この映画は映画館で見た方が良いと思います

暗闇の中で、ヒラリーと一緒に、
スクリーンの光に包まれて…。
本当に良い映画でした。

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