ノラネコの呑んで観るシネマ

TAR/ターのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.7
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1612.html

二周目。
一周目の時には流してしまった点と点が繋がり、だいぶ作品解像度が上がった。
謎の視点、プレゼントの本、地下室の意味、地獄の黙示録etc.
72dpiが200dpiくらいにはなったぞ。
浮かび上がって見えたのは、やはり内なる音楽性を巡る長い旅だな。
あとリディアは少なくとも見える範囲では、パワハラの類をやってない。
ただ観客と周りの登場人物に、彼女と何人かの女性の関係をビミョーに誤解させる。
相当イケズなミスリードなんだよな。
解像度を350dpiまで持ってくには、あと1、2回は観なきゃ無理そう。
どこまで言語化出来るか分からんけど、とりあえず今週中にブログ書きます。

一回目。
これは一筋縄ではいかない大怪作。
ベルリンフィル初の女性常任指揮者、リディア・ターのパワハラ転落劇なんだが、予想していた展開とだいぶ違う。
彼女のパワハラは、頭ごなしに怒鳴りつけるとか、そう言う分かりやすいものじゃないんだな。
一見人当たりも良いし、頭も切れる。
だからパワハラの対象も誰彼構わずではなく、なるべく角の立たない体裁を整えつつ、人事を思い通りにしてくるからタチが悪い。
この人レズビアンの設定で、ビジネスと好意が入り混じった女同士の関係性も不穏さを増幅。
ある事件でリディアが告発されると、今度は彼女の手口が逆になったように、ジワジワと静かに炎上が広がり追い詰められてゆく。
フィクションなんだけど、観ているうちに実話かと思うくらいのリアリティ。
ラストなんて画的には恐ろしくシュールなんだけど、状況的にはいかにもありそうなもの。
タイトルロールを演じるケイト・ブランシェットは文句無しの名演なんだが、これでオスカー取れないとか不運としか言えない。
一度観ただけでは意味の分からない描写もある。
例えばある本を主人公に送ったのは一体誰か?なぜ彼女は最初のページを破って捨てたのか?メトロノームを動かしたのは誰?など、謎めいた描写が散りばめられている。
あと本作は、やっぱクラッシックファンの方が楽しめるんだろうなと思う。
オープニングクレジットが非常に長いんだけど、エンドクレジットもちゃんと観た方がいいよ。