千年女優

TAR/ターの千年女優のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.5
世界に名を轟かす指揮者にして当代屈指の作曲家で、伝統あるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団初の女性指揮者を務めるリディア・ター。その圧倒的な経歴と音楽への知見に強い自負を持つ彼女が、同性のパートナーと家庭を育みながら立場を利用した若い女性音楽家へのハラスメントが表面化して精神を蝕まれる様を描くドラマ映画です。

初監督作『イン・ザ・ベッドルーム』と続く『リトル・チルドレン』で立て続けにアカデミー賞複数ノミネートを達成しながら長きに渡って監督業から遠ざかっていたトッド・フィールドの16年ぶりの映画作品で、オスカー女優のケイト・ブランシェットを盛り立てた重層的な物語が批評家から絶賛されて多くの映画賞にノミネートされました。

男性的世界でのし上がる女性物語ながらイージーなフェミニズム話とはせず、長尺を活かして様々な要素を掘り下げながらキャンセルカルチャーが浸透した「天才なき時代」の良し悪しを捉えます。厚みのためとはいえ『地獄の黙示録』オチは驕りが漏れているようにも思えますが、ブランシェットの彼女しかできない演技で引き込む一作です。
千年女優

千年女優