卵

TAR/ターの卵のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
こんなに映画観て不安になることない

専門的に自分の得意なことだけやってたら足もと掬われるのこえーよ

最後オリエンタリズムが過ぎないか?

人物とか行動が男性的であることを自分は情けなさがカッコいいってのを一つの指標にしてるんだけど、その意味でターはめちゃくちゃ男性的だったと思う。バチバチに服装決めて、本番みたいに緊張して指揮者変われるわけないのに代理の指揮者ぶっ飛ばして護衛に連行されるの本当に惨めで良かった。カッコつけて情けなく死にたい

他のユーザーの感想・評価

NO

NOの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

女性指揮者として絶大な評価を受けているのに家父長制の呪いに掛かった主人公が奈落の底まで引き摺り込まれる映画だった。

影響を受けてきたレコードが尽く男性が作ったものでそれを足を使って並び直しているカットが端的に本作を現しているように感じた。

あんだけ成功しているのに、嘘をつき、弱者を力でねじ伏せるターが虚しくて仕方ない。具体的には大学で男性主義だからと否定する学生を論破するシーンや小学生の娘のいじめっ子を脅すくだりの破壊力が凄い。あと、転んだだけなのに男に襲われたと嘘をつき、悪き男性たちと戦っている私をセルフブランディングするくだりが実に痛々しい。

結局前時代的なマッチョイズムなんだよな…。与党の女性政治家に限ってめちゃくちゃセクシャルマイノリティに風当たり強いとか思い出した。そういう意味でいうと一番鑑賞後の感覚が近いのは「女帝・小池百合子」。

ターの加害性はあるとは言え、完全にクロではない。明確に何をしていたか分からない部分もあるし、講義のくだりも悪質な切り取り。そもそも、謎の女性の悲鳴や霊的なカットなどターが見ている世界が現実なのかさえ分からなくなる。結局冒頭に撮影し、チャットしていた人間も予測は出来るが誰か分からない。世界における曖昧さ、不明確さが本作ではあったと思う。

ラストも改心や再起を図ろうとしているとも言えるし、全然そんな事ないようにも見える。「モンスターハンター」のクラシックコンサート?も希望なのか絶望のか観客によって解釈が分かれるし、自分もどったつかずの異様な感覚に包まれてしまった。
Sasada

Sasadaの感想・評価

3.6
権力に狂い、狂わされる悲喜交々。不可解で不穏な出来事すべて現実には思えないし、整合性を脇に置いてでもやりたいことがあったんだなという感じ。

どこに向かっているのかわからないながらも観続けられる引力は備えた映画だったし、ケイトブランシェットはどの場面でもいちいち脚が長い。

「ブラックスワン」とか「ファーザー」的で、現実と虚構の境界線をファジーに塗り重ねつつ美しいのが何より印象的。

ただキャンセルカルチャーが云々と言ってたけれど、あんなのただのハラスメントと迷惑行為なので、そこはちゃんと切り分けなきゃねと。
難解。。
完全に理解が追いつかないまま物語が進むも、気づくと凄まじいカリスマ性のリディア・ターの魅力にどっぷり浸かってる。序盤はこの調子で2時間半キツイなと思ったけど、全然そんな事なかったな〜
これもケイトブランシェットの魅力が故かな
kaorui

kaoruiの感想・評価

3.5
歌声と自然、そして生活のざわめきが混じり合ったオープニングから一転、都会の喧騒を排除し、全くの静寂にストリングスのドローン音が不穏な通奏低音を奏で、白くシンメトリーな画の中物語が静かに進む。
呼び鈴、ドアをノックする音、メトロノーム、冷蔵庫、森の中の悲鳴、そして携帯の呼び出し音が静寂を破るたびにブランシェットの歯車がが少しずつずれていく。
そしてオリジナルスコアの一音をフラットに変えた時…

全編に繊細な音の演出が張り巡らされている。ええやんか。
自分勝手な行いの果てに訪れる天才主人公の転落の様子に目が釘付け。何が真実かはわからない部分もあるけれど、自分の行いが影響していることは明らかで。
上から目線の、自己陶酔型。いわゆる"天才"のひとの動向を見る。
終始嫌〜な空気感なので、普段から周りの空気読みがちなわたしには結構重めに感じました。何事も配慮って大事だけど、それでは天才になれないのかな。成し遂げるって難しいね。
iyo

iyoの感想・評価

3.6
158分の割には退屈しなかったけど、先の読める転落人生映画なので、初めから落ちると分かりきってるジェットコースターに乗ってる気持ちで観ていた。

張られた伏線が全く回収されなくてウケる
tatsu

tatsuの感想・評価

-
誰に感情移入出来るでもなく、158分間色々なモノを寸止めされてるような感覚でした。ケイトブランシェットが凄すぎるのでつまらないわけでもない。ちょっとよく分からない気持ちなので評価できないです。
リタリンのとりすぎと権力ゆえに誰からも注意されなくなるのコンボはダメだね
yuyuyu

yuyuyuの感想・評価

4.5
久しぶりにどっしり重い映画で今リアルタイムで観るべき映画。

色々な感情がありすぎてね。それが音楽は言葉にならない複雑な感情を現す。常に流れ次に進んでいく。

よく出来てる。全部よく出来てる。映画としては最高だと思う。

地獄の黙示録を是非見てから見て欲しい。過去の遺物ではなく今も続いている。

私は地獄の黙示録が嫌いである。アジア差別な映画だから。バッハは差別主義だから好きじゃないと言った学生と同じ気持ちである。

でも彼女がそれを負わないといけなかったのだろうか?そうは思わない。出来れば幸せになって欲しい。そしてアジア人。
それを観るアジア人の私達…。

嫌悪と怒りがスレスレにある。でもそれを望んではいない。栄光と名誉を彼女にあって欲しい。

この気持ちはマーラーが良いのだろうか?バッハか?多分私にはどちらでもない。


ーーー
追記
監督インタビューでモンハンのゲームが好きで彼女が堕落した先がゲーム音楽であるのは決して侮辱的な事ではなく、彼女はそこで回帰してるっていうのは良いことなんだ。みたいな事を見たが、その前に地獄の黙示録の舞台を入れたのは意図的にアジアを下にみせてるし、わざとでしょう。なんならまだそういう目線があるからそう描いたと言ってくれた方が良かったし、言い訳ぽいコメントも要らなかったかもな
良い映画。どのシーンにもそれぞれ意味があって丁寧に作り込まれている。
"狂気と禁断の交響曲"みたいな売り方がされているけどどちらかというとケイト・ブランシェットのソロが最初から最後まで続いていて、彼女のキャリアの集大成と言っていいと思う。このために指揮もピアノもドイツ語もアメリカ英語も覚えたっていうから彼女のストイックさに惚れてしまいそう。俳優ってすごい。
劇中、ターはどこまでも落ちていくのかと思えば意外な終着を見せてくれて、それが冒頭で示唆されていることと繋がるのでエンドロールは非常に清々しい気持ちで見ることができた。
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