Kota

TAR/ターのKotaのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
“ロボットに栄光はないの。”

惜しくもオスカー主演女優賞を逃したものの、個人的にはこのケイト・ブランシェット受賞でお願いします。冒頭から約30分ほぼ彼女の一人語りに近いワンカットがいくつも続きそれだけで語られる彼女の女優としての力量。特に生徒のマックスを理論武装で攻めるシーンが圧巻。ここがハマるかで好みは分かれそう。

字幕を目で追ってしまうのが勿体無くて、2回目を字幕なしで見た映画は久々。それほどに話している内容というよりは、彼女の表情やトーン、それを取り囲む環境(会話の間合いや、相手との距離感)や彼女にとっての雑音(比喩的な意味も込めて)から目が離せない。頂上でいないといけないプレッシャー。特に音楽(や映画)のような芸術作品においてはどれだけ自分の理論を自分で信じることができるかというところが肝になってくると思うのだけど、それと比例するように周りの人間関係が少しずつ崩れていく。プロであり続ける事は自分自身でなくなっていくことなのだろうか。どんな仕事でもプライドを持って楽譜を真剣に見つめるターこそが彼女自身だったと信じたい。

ケイト・ブランシェットでは“ブルー・ジャスミン”が一押しだったのだけど、塗り替えられたかも。
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