このレビューはネタバレを含みます
緻密で巧妙な脚本が
物語の半歩先を照らす
観客の私は心導かれる
孤独で傲慢で繊細な
マエストロの狂気的なタクト
観客の私は心踊らされる
身から出た錆が
不協和音をもたらす
偉人たちのレコードを
何食わぬ顔で足蹴にする
驕り高ぶる利己主義
周りの人間の厚意を
踏み躙る不義理の数々
若き乙女の才能に
現を抜かす
思慕の念を寄せて
身を焦がす
辿る道は
崇高とは程遠く
自ら破滅へと歩む
それは想像に容易く
落魄れて知る
傲り高ぶる自惚れ
然れど枯れぬ
音楽への慈しみ未練
腹を決める
毒にも薬にもならぬ
者には決してならぬ
巧拙を問わない
隔たりなどない
どれだけ優れた
資質や才能があっても
一人では何も成し得ない
好きこそ物の上手なれ
これぞ戒め
p.s.
映画館の音響と暗闇と
素朴で卓越した物語に
飲み込まれる感覚
これぞ至高のひととき