ピートロ

TAR/ターのピートロのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.9
数々の受賞タイトルやシネフィルのかたがたの高評価で気になっていた作品。
抑え気味の前半(ひたすらペダントリックな対話が続く)はちょっと意地悪。
「孤高の天才の苦悩」という雰囲気で進みながらも、徐々に明らかになっていく「無数の明確な落ち度」に、観客サイドの主人公に対する評価もそれほど振れ幅はなさそうに感じた。
要は想像していたよりも解釈の「あそび」は少なかった(結局は因果応報で自業自得…)。
「狂気へといたる道」のスレスレな境界線の表現が見どころ(※狂気と呼ぶか迷ったけど、「あの行動」にまで至ったらもう狂気にカテゴライズしていいかなと)。
品よくクラシカルなルックに突如挿入される下世話さ(地獄の黙示録オマージュ、モンハン、EDテーマなど)は嫌いじゃない。
ラストが素晴らしいので途中退席したらもったいない。
ケイト・ブランシェットってすごい。

他のユーザーの感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

映画を見た後すぐには、おもしろかったのかどうかわからなかった。
しかし、いろいろ考えてみると面白い作品だったなと思う。
この映画では、物事を一面からではなくいろんな方向から捉えることが要求されている気がした。

①有害な男性性について
ターはレズビアンの女性として描かれているが、「有害な男性性」を象徴する人物である。
自分のお気に入りの女性で身の回りを固めて、出張先では浮気をして、タイプの女性のことは贔屓をして、逆に気に入らない女性や都合の悪い女性は遠ざける。
プライドが高く、周囲の人間を見下し、自分がこうすべきと思ったものに対して反対意見を言ってくる人には徹底的に反抗する。
ターを男性が演じることになっていたら、かなり嫌なやつとして映ったかもしれない。しかし、女性が演じることによって、一面的には見えないように工夫されている気がした。


②権力構造の怖さについて
本映画は、権力者が権力を振りかざして思うがままに振る舞っていた結果、没落していったという自業自得な結果を招いた映画と捉えることもできる。

ターの目線からすると、徹底的にアートを追求するために動いている(つもりだった)ように見える。
序盤の授業での生徒との問答にあったように、ターは音楽そのものに向き合うべきという考えをもっていた。
作品自体の評価と、作者の人間性は分離すべきであり、どんなに嫌いな人物が作った作品でも、まずは理解しようと試みるべきであるという考えだ。
自分のパートナーであるシャロンをコンサートマスターにするのも、フランチェスカを助手として次期副指揮者候補としているのも、セバスチャンを副指揮者から下ろすのも、ターからすれば、人間性ではなく実力をみて判断しているのである。
実際、指揮者の意図をメンバーに伝えるシーンでシャロンは実力が認められてるのがわかるし、セバスチャンの意見が間違っていると思ったとき、周りに意見を求めて間違っていることを確認して実力不足を確かめている。

しかし、周囲の人間からするとそうは見えない。権力を振りかざして周囲に好きな人を集めているように見えるのだ。
副指揮者にそれを指摘されて、ターは動揺してフランチェスカを次期副指揮者に指名するのをやめる。また、オルガについては気に入ったから採用してソロまで与えた部分がある。
これらの行動は、作品と作者/演者の人間性は分離して考えるべきだというターの考え方から外れた行動である。それによってターの輝かしい日常は失われていく。

ターがこれらの行動に至った要因は、「権力を持ってしまったから」だと思う。
権力を持つと、周囲から権力者という目線で見られる。ポリシーにそって行動していても権力を振りかざしているように見られ、そう見られないように行動を曲げると、ポリシーに反する行動となり、結果的に権力を振りかざすこととなる。
そう考えると「人間は権力を持つとみんな悪人になってしまう」のではなく、「人間は権力者をみんな悪人とみなしてしまう」のかもしれない。権力構造は、構造自体によって必然的に権力者へのヘイトを生み出してしまうのかも。

③物事の捉え方について
本作品は、多面的にとらえることの重要性を考えさせられる作品であると思う。
作中でSNSに投稿された動画のように、ある場面を一面のみからみると、全く違う見え方をしてしまうことがある。本作は、それが意図的にやられている気がする。ある一面から捉えると、他の面から捉えたときと見え方が違うようにできているのだ。

映画の中でも色々なことが曖昧で、どちらとも捉えることができるシーンが多い。
クリスタはターの被害にあっていたのか、ただのやばいストーカーだったのか。
メトロノームのシーンやラストシーンは現実なのか、夢なのか。

これらを曖昧にするためか、この映画ではBGMはほとんど(一切?)使われておらず、作品中で演奏される音楽のみで進んでいく。
作中でバーンスタインが、音楽は言語よりも雄弁に人の感情をストレートに伝えると言っている。本作ではこれを避けることで作品の解釈を観客に委ねやすくしているように思う。


この他にも、いろんな捉え方ができそうな作品だと思う。
いろんな人の感想を見ているととても面白い。この映画をホラーと捉える人もいれば、サスペンスと捉える人もいる。(実は幽霊が写ってるらしい、、)
こうやって様々な解釈をされることこそ、この映画の本質なのではないだろうか。
もう一回みてみたい!
見ている最中、見終わった直後に感動するとかは正直あまりなかったし、ラストもわりと唐突でこんなあっさりと感じで終わるんだって思ってしまった。それでもこの映画を好きだと言えるのは、今作の孕むテーマ性とかなのかなって思う。また、最近ジャニーズの件が話題になっているのでついそれも思い出した。


①リディアターという人物像
・彼女は音や振動に敏感であるということが全編通して伝わってくる。(生徒の貧乏ゆすり、ペンのカチカチ音、車の振動、冷蔵庫の音に対する反応から。冷蔵庫に関しては彼女の幻聴の可能性もあるが)
・命令的、権威的な言動をするということも伝わってくる。
・ランニングやジョギングも欠かさず行っているよう
・頻繁に使う言語を切り替えている。これは伝えたいことを英語よりもドイツ語の方が正確に伝えられると彼女が考えた時にドイツ語を話すことを選択する、みたいな感じだと思う。

②リディアターとオルガ/ファムファタル
・オルガはファムファタルの役割を果たしている。リディアを虜にするミステリアスな存在。最終的に権威を失ったリディアからオルガら離れていく。ただ、今作の場合リディアもオルガもどちらも女性である。これまで見てきたフィルムノワールは男性をファムファタルである女性が誘惑するという形を取ってきた。フェミニズム的な観点からそれは男性性的欲望や幻想から一方的に女性を見ているといった批判がされるが今作ではリディアも女性(男性的な女性としては描かれているが…)なので興味深かった。
・特に、オルガが車に置いてきたクマのぬいぐるみを届けるシーンは、そこだねホラーやサスペンスのような雰囲気でちょい浮いてるのだが、かなり良かった。忘れ物を渡すために人の家に行くことによって、自分がこれまで知らなかったその人の領域に踏み込んでしまうという展開はホラーやサスペンスの王道ではないか。
・オルガの最初の登場シーンは印象的。リディアがトイレで手を洗っている時、突然ブーツを履いた女性が現れる。この時からリディアは彼女に惹かれているようだった。
・オルガを演じた役者は本物のチェロ奏者らしい。

③作品と作り手の関係は切り離せるものなのかそうでないのか
・まずここで「作り手」という時それは監督だけを指すのかそれとも直接関わった全ての人を指すのかという問題があるが、ここでは直接関わった全ての人とする。今作では作品と作り手は切り離せないものだというスタンスをとっているのではないかと思う。リディアは自分の好みで勝手に演奏者を選んでいる。誰が作品作りに携わったかということは作品に影響を与えかねない。実際リディアはオルガが加わる前と後でチェロの存在感(音の大きさ)を変更していた。
・エンドロールが最初に流れた演出も、これに関係しているのではないか。日本と異なりアメリカでは映画館で観客はエンドロールで皆席を立つ。だから敢えてエンドロールを最初に流すことは、作品に携わった人を観客に意識させる効果があったのではないか。


④その他
・この映画に関しては、誰が黒幕だとかそういう考察もたくさん出ているが、それに関してはあまり興味を持てないし持たなくても良いと思う。
potatohead

potatoheadの感想・評価

3.5
のだめくらいしかオーケストラの知識ないワイには音楽論(劇中でけっこう挟まれる)とかはわからんし、そこまで印象に残ったわけではない。緊迫感はあったけど、セッションとかのが素人的にはおもろかったな。
リディアさんが孤立してくきっかけも、ジェンダーとかエスニシティに関する発言がSNSに絡んだよくあるやつ。それに言ってしまえば恵まれた環境で育った上で、さらに才能あるやつが勝ち上がる音楽家って職業柄、周りと理解し合えそうもないし、傲慢になるのもまあ仕方ない気がする。周りの有象無象のアホにイライラしそうだし。
最初のSNSのシーンは若いチェリストのやつかな?伏線ぽい感じ出してるけどそんな意味ないし何故挿入されたんかわからん。
2時間半は長え、隣の人無限に寝てた。
主演のケイトブランジェットはオーラ出てていかつかったな
ぽ

ぽの感想・評価

3.0
ケイトブランシェットが良すぎて何時間あってもみれる!って言ってる人の8割は(内容はちょっと退屈したけど) が含まれてると思ってます笑
好きなところも多かったけど流石にこの内容で2時間30分超えはきつかったなー。
reniltalf

reniltalfの感想・評価

4.8
2023/20本目

今年ベスト!
今年ベストがきた!

とにかくヒリヒリ、ヒヤヒヤした
行き過ぎた正しさの強烈な欺瞞も、権威的で幼稚な愚かさも、全て射程内におさめられた脚本演出が素晴らしすぎる

キャンセルカルチャーの映画に間違いはないけど、キャンセルする側の倫理観も肯定しないあたり、現代特有の転落の様相で最高、最高!!

ラスト、日本人は見るとひっくり返るかもしれない
むしろひっくり返ってほしい
ひゃー、これは難しい映画だわ。
と思ったのは、ストーリーとか解釈の問題ではないです。
音楽への愛と情熱は伝わるし、芸術家の人間像もわかりやすいです。
そこではなくて、物語としてこれでいいの?という思いです。
テーマが多角的な上にめちゃくちゃ矛盾があるんですよね。

ケイト・ブランシェットの役者としての技量はもとより、彼女自身が芸術家である事を見事に示していました。
今回の彼女はセクシー美女封印。メイクもほとんど控えめで、若づくりも全くしていません。
けれど所作や姿勢の美しさ、骨格の品の良さで充分ハンサム・ウーマンでした。
彼女の演技にはスタンディング・オベーションを送ります🎵

オケのリハーサルのシーンには特に魅了されます。楽の深い音、ケイトの指揮者ぶり、ポンポン飛び出す英語とドイツ語の指示はユーモアさえみせ熱量が半端で無い。
もっとみていたい。
本番も聴きたかった〜。欲求不満だわ😭


女性として初めてトップ楽団ベルリン・フィルのマエストロに就任。世界の最高峰の指揮者として君臨するリディア・ター。
人々は彼女の語る言葉に聞き惚れ、エモーショナルな指揮に憧れる。
リディアはその地位と多忙なビジネスによって、傲慢で尊大な人物になってしまった。

ように、描かれているということなんだろうけれど…私にはそう見えなかったんですよ。

そもそも偉大な芸術家とは、エネルギーが一般人より高いんですよ。そして平凡な日常生活を送るようにはできていない。
リディアの場合は自分の時間の多くを音楽に捧げているし(そうでなくては超一流にはなれないから)、彼女が愛する人も音楽の才能を持った人に限られる(ただし愛の対象は女性)。
つまり音楽しか愛せない人なんです。
長らく共に過ごしたパートナーなら、それを理解していても良さそうなものを。
何を今更…って感じ。
そもそも、心臓が…とか不安がらせていたのはあんたの方だろうに。

リディアがダメな人だというなら、芸術家でまともな常識人は誰?って聞きたい。権力を振るったというけれど、完全主義者がより良い音楽を求めただけでは無いの?
人事権は元々彼女の権限で、それを行使したから「横暴」って言うなら、最初から権限なんて与えなければいい話。
素晴らしい音楽家として尊敬しているなら、そんな彼女と一緒に仕事ができる事をこそ大切に思うはず。自分が一番になれないから彼女を恨んだり報復したりするなんて、そっちこそが人間の屑だと思う。

スキャンダルで失墜しても「ゼロからやり直し」って事はないでしょう?!
才能は嘘じゃないのだから。
この弁護士はバカなの?
真のファンとはそんなに冷たいはずがない。
彼女の周りは全員ただの取り巻きだったというの?
現代ではSNSが人間を葬り去る時代なのだと
それがテーマ?

映画のキーワードは「マーラーとバーンスタイン」
しかしユダヤ人という切り口はサラっと触れて飛ばされてる。
むしろバーンスタインはクラシック以外の音楽(ミュージカル)もやった人だよねって方が結論みたい。
バーンスタインはリディアの「師」であり、リディアの指揮のスタイルの原型で、子どもの頃、音楽を志すきっかけでもあった、メンターでした。
しかし人間的には結果的にバーンスタインとは真逆な生き方をしてしまった。
なので破綻した。
人間としてやり直しましょう。

えー!?そんなレベルの話?
のように感じて、納得いきません。

またこの映画は、ジェンダーを扱ってる割にあまり肯定的な感じを受けないんですよ。
女同士って厳しいよね。突き詰めて完全を求め過ぎだよね。って見える。
フランチェスカの裏切りも、顔に似合わず本当に汚い。
ソフィアだってわがままじゃなかったのかな?養女だって一緒に育てていたのではなかったのか?異性ならそもそも完全に分かり合えるわけないって「諦め」があるから、こうはならないと思う。結婚していれば離婚はこんな簡単に済まない訳だし。
トランスジェンダーとして登場したマックスも心が狭くてクソだった。
WhatsAppで噂話と悪口とか、女がやってる設定で、何?って思ったし。
リディアは女性である事を否定していない。
トランスジェンダーではないのだ。
レズビアンなだけ。
だけど養女のクラスメイトに対しては自分をパパと呼んでいる。
なんでここでは男なんだろう?
色々、女の面倒臭さが描かれているんだわ。
音楽映画じゃなかったのか…。

というか、権威とか、古い時代と現代の価値の相違とか、こういう事を描きたかったなら、クラシック音楽をテーマにしないで欲しかった。死んだ白人の音楽?数百年生き続ける音楽に向かってなんでそういう事いえる?

リディアは聴覚過敏という設定なのに
だからこそクラシックの一流オケの音が引き出せるのに
音楽ができるならばなんでもいいと、思えるわけがないのに。

指揮者は指揮台の上が居場所
世界のどこへでも旅をする
それは真実

エンターテイメントとしての音楽にも感動と価値はある。
それも真実
 
でも、リディアにあれ「モンハン」は、無いよね…
だって聴衆が…
ヘッドフォンしてオケ聴くのか…
と、どうしても思う私がいる。

芸術というものは表現者だけでは成り立たないのだ
優れた鑑賞者がいて初めて
その真価は姿を現す
違いますか?

だとしたら悲しいことにリディアはもう芸術家では無い。
Kaba

Kabaの感想・評価

4.0
ケイトブランシェットかっこよすぎる
炎上当事者としてわかりみがふかい
shinichiro

shinichiroの感想・評価

5.0
◎ めちゃくちゃ面白かったけど、結構??があるまま過ぎていった。
ケイトの演技はブルー•ジャスミンの時のそれに匹敵するかそれを上回るような圧倒感がありました。息遣いや表情など細かなところまで感服です。何度かある長回しのカットが舌の巻どころでした。
クラシック音楽が好きだったので色々固有名詞が出てきて盛り上がりました。Tarは完璧すぎるキャリアを築いているが、ちょっとした綻びであっという間に転落していく様がちょっと自分には急展開すぎたけど、楽しめました。バーンスタインの昔録画したヴィデオを見て涙する場面がハイライトかも。バーンスタインの音楽に対するスピーチも結構感動的です。地獄の黙示録をなぞってベトナムへ!最初から最後まですれ違いや孤独が浮き彫りになっていて飽きることは全くなかったです。
細かい謎で見ている最中置いてきぼりをくらっても、ケイトの圧倒的な演技でついてこれる相反性

↓ジャケットのオマージュが映画内でありました。
◉ Claudio Abbado, Berliner Philharmoniker - Gustav Mahler Symphony No.5
https://www.youtube.com/watch?v=hOIzYnZJ9Qg
ヤナ

ヤナの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

深い、のか?
世界一のオーケストラの常任指揮者に君臨していた女帝が転落していく様を描いた作品、というのがザックリとしたあらすじだが、
サスペンス的なカメラワークが全編に渡って意味深な雰囲気を醸し出す。

が、前半のクラシック談話とでも言うような多くのやり取り、
それほど尖った内容がある訳でもなく、クラシックの雑誌見たらどこかに書かれてそうな、まあそれはそう…という話が多い。
雰囲気作りには効果的だが、昨今のクラシック業界に警鐘を鳴らす!というので無ければ、ここまで入れる必要はあったのかと…

本人の素行の問題が大きな挫折に繋がるが、作中で不祥事の例に挙げられた指揮者のように、本当に実力のある者ならその内に戻ってくるような業界だ。

ラストのモンスターハンターの仕事も誰でも回ってくる仕事かというとそんなことはないだろう(いくら片田舎といえど… 元々大阪から人を呼ぶつもりならアマチュアではないはずだし)

作曲家の意図を読むこと、で主人公が頭をかかえた後に舞台に立ったが、
聴衆はみなコスプレをして主人公以上にその曲を知っていた、という皮肉で閉幕したのは呆気にとられたが、それほど上手いオチとも思えなかった。

ただ、この長い映画を最後まで見られたのは、間違いなく主演の演技力と画面構成の面白さのおかげだった。

曖昧な部分が多く、色々な考察ができるのがいかにも芸術映画、という感じだが、往年の芸術映画ほどの力強さを感じるかと言われると微妙なところ。

使用したクラシック楽曲については、
メインで採り上げたマーラーの交響曲第5番の最終楽章を流さなかったのはかなり意図を感じる。
録音やリハーサルは楽章順など前後するのは普通だが、この曲で再生を想起させるような最終楽章が一度もかからなかったことから、
主人公の夜明けはまだ見えない、という暗喩のようだ。
Kabao

Kabaoの感想・評価

4.4
場面展開が早く登場人物が多いので話の流れについて行くのが難しい。

指揮者のカリスマ的存在のタ―が、一つのことをきっかけに公私共に崩れ落ちていく様が見ていて辛くなる。圧倒的な音楽のセンスと実力を持っているが、生徒へのパワハラや大先輩をクビにしてしまうなど、自分に絶対的な自信を持っているのが後々あだとなったかも。

ただ、東南アジアでの謎のオーケストラの仕事でも真摯に取り組んでいるように、どんな仕事でも終始音楽に真剣に向き合っている姿はトップまで登り詰めたプロフェッショナルを感じる。しかし、前半のバッハの話で、音楽の評価と人格は分けて考えるべきだとタ―は主張するが、現実は厳しくスキャンダルをきっかけに世間の評価は地に落ちる。現代の総監視社会では、純粋に音楽が素晴らしいだけでは厳しい現実があることを見せられた。

話が複雑に絡み合って、最終的にタ―の没落に繋がっていく構成が素晴らしい。(実際2割ぐらいしか理解できてない)
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