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モリコーネ 映画が恋した音楽家のYYamadaのレビュー・感想・評価

4.0
【ドキュメンタリーのススメ】
モリコーネ 映画が恋した音楽家
(2021)

◆ドキュメンタリーの種類
 証言に基づく「解説型」
◆描かれるトピックス
映画音楽作曲家
 エンニオ・モリコーネのキャリア

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1961年のデビュー以来、500作品以上もの映画やテレビの音楽を手がけ、2020年に惜しまれながらこの世を去ったモリコーネ。
・『ニュー・シネマ・パラダイス』『荒野の用心棒』『アンタッチャブル』など45作品にも及ぶ傑作から選ばれた名場面や、最高の音響技術で再現されたワールドコンサートツアーの演奏、クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ジマー、オリバー・ストーンら錚々たる顔ぶれの監督・プロデューサー・音楽家へのインタビューを通して、モリコーネがいかにして偉業を成し遂げたのかを解き明かしていく…。

〈見処〉
①忘れない——。マエストロが遺した
 永遠のメロディ。
・『モリコーネ 映画が恋した音楽家 』は2021年に製作されたドキュメンタリー映画。
・本作は2020年7月に91歳に逝去した映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネに迫ったドキュメンタリー。
・「ジュゼッペ以外はダメだ」とモリコーネ自身が指名した本作の監督は、伝説のマエストロ、モリコーネを師と仰ぐ『ニュー・シネマ・パラダイス』『鑑定士と顔のない依頼人』のジュゼッペ・トルナトーレ。5年以上にわたる密着取材にて製作された本作は、結果として、モリコーネの生前の姿を捉える最後の作品となった。

②モリコーネとアカデミー
・セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』(1964)にて、世界的に脚光を浴び、生涯に500本以上の映画・テレビ音楽を手がけたモリコーネ。
・『天国の日々』(1978)、『ミッション』(1986)、『アンタッチャブル』(1987)、『バグジー』(1991)、『マレーナ』(2000)にて、アカデミー作曲賞ノミネートを重ねたモリコーネであったが、最も受賞に近づいたとされる『アンタッチャブル』では、坂本龍一らが手掛けた『ラストエンペラー』の後塵を許すなど、イタリア人作曲家に対するアカデミーのハードルは高く、2007年アカデミー名誉賞が与えられるまで、受賞とは無縁であった。
・その局面を打破したのは、6度目の作曲賞ノミネートとなった、クエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』(2015)。御歳87歳のモリコーネが35年ぶりに西部劇の作曲を手掛け、話題となった本作であるが、バイオレンス作調のタランティーノを高評価しないモリコーネが、本作により、初のアカデミー作曲賞を受賞。そのスピーチの際にタランティーノを讃えるシーンは、本作でも登場している。

③結び…本作の見処は?
本作はなぜ泣けるのだろう?全ての映画ファンの必見ドキュメンタリー——
◎:「口笛で映画音楽を」 …映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの本質は、実験的作曲家であることがわかる作品。映画音楽を虐げる旧来の音楽批評に対するモリコーネの苦悩と、彼が手掛けた音楽が映画界に与えた革新的な楽曲を、ぜひ本作で確認して欲しい。
◎: 150分を超える超ロング・ドキュメンタリーであるが、映画界の重鎮とモリコーネ本人の証言を適切に紡ぎ、最後まで興味深く鑑賞出来る。
○: 「水曜どうでしょう」などバラエティ番組のBGM『荒野の用心棒』を代表に、モリコーネが作曲を手掛けた作品は、作品内容よりも音楽が有名なものも多いが、クラシックな作品もしっかり鑑賞しようと気にさせる作品でもあった。『ミッション』『ワンス・アポン・ア・タイム・インアメリカ』も『アンタッチャブル』も未鑑賞であるのが、恥ずかしい…。
▲: 監督作品の全てをモリコーネが作曲を手掛けているジュゼッペ・トルナトーレ作品のエピソードが『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』のわずかなシーンが登場するだけなのが、非常に残念。重鎮のインタビューばかりで、本作を手掛けたトルナトーレは遠慮をしたのだろうか?そう思うのは『ニューシネマ~』を映画音楽No.1だと思う自分だけだろうか?
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