ひでG

評決のひでGのレビュー・感想・評価

評決(1982年製作の映画)
4.1
法廷劇、エンターテイメント、人間ドラマとしても、超一級の作品。

数々の名作がある中、監督シドニールメットにとっても、大スター、ポールニューマンにしても代表作だと思う。

さすがな人はさすがだった!

再見なんだけど、全く色せていない。
むしろ、細部にわたる緻密な計算と映画的な見せ方【魅せ方】やメリハリの付け方などは名人芸の域だなあと、感心しまくり!

って言うか、面白くて、2度目ということを忘れて一気に観た!

映画には2時間、長くて2.5時間という制約がある。
その中で、起承転結を付けて、フィナーレに持っていかなければならない。

法廷劇は当然膨大な資料や証言や事実確認などが必要になる。
それをいかに効果的に、ドラマチックに見せるか、

名人は、一点に集中させる。
まるで、観客も陪審員の一人のように。

あの一点で、という批判もあるんだろうけど、最大級に考え抜かれ効果的ブラスドラマチックな見せ方だと思う。

ニューヨークに飛んだボールニューマン、大切な証人と会うシーン。
短いなんでもないシーンに、彼女の人間性がきちんと描かれ、大切な証言をすることにリアリティを与える。


また、どーしょうもなく堕ちていた飲んだくれのボールニューマンが、裁判に入っていくきっかけなど、連続ドラマだったら1、2回かけるところを、ポラロイド写真で見せるあたり、
ポラロイド写真が現像され、事実が浮かび上がってくるという見せ方、上手いね!

それから、あえて引いたアングルや光の明暗を多用し、人物の心情変化を表すところ等等

ボールニューマンの名演技にプラスして無駄ない名人芸演出!

病院の医療ミスという社会的な裁判に対して、この弁護士が最初は金目当て、そして示談を蹴るあたりの見通しの甘さと依頼人にも相談しない身勝手さ、
そんな弱さ、脆さモロ出しの弁護士だからこそのリアリティある。

法廷劇にありがちなオーバーな演出は、できるだけ抑えているところもさすがである。

劇的な思いは観客こっちが作るもの。
大切なことをちゃんとわかってらっしゃる。

それにしても、ボールニューマン、かっこいいね。
落ちぶれても、弱気になっても、立ち上がっても、語っても、全て彼中心に視線を釘付けにすることができる。

これでオスカーとって欲しかった。

私ごとですが、599本目相応しい重厚な名作でした!
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