四畳半

ケイコ 目を澄ませての四畳半のレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
5.0
劇場で鑑賞

鑑賞中、言葉に出来ない感動に包まれる。これぞ映画って感じ。
主人公の耳が聴こえないので全体的に台詞は少なめだが、お陰で環境音などがめちゃくちゃ鮮明に聴こえる。
音の有る無しに関わらず、言葉のひとつひとつが相手に伝わったり伝わらなかったり。

ろう者を主人公にした作品は最近増えてきたが、今作はより日常的な不便さだったり、周りとのズレのようなものを的確に映していて唸った。
それはケイコと最初から観ている観客しか共有してないリスクで、他の登場人物には完全には伝わらない。

彼女にとってボクシングだけが、相手に自分の気持ちをダイレクトに伝えられる手段だったんだろう。
この映画が素晴らしいのが、そこからの飛躍(視野の広がり)を描いて終わるところ。
上手く言えないけど、とても尊くて希望的なものを感じるラストカットだった。

何かを超えた演技をする岸井ゆきのさんに圧倒される。手話もボクシングも素人目に見ても納得するしかない完璧な作り込みだったと思う。
あの高速ミット打ちは呼吸止まった。

追記:
日本語字幕上映で観たんだけど、台詞以外にもSEの字幕があり、作り手が伝えたい音が明確になってて興味深かった。
劇盤が無いのも聴覚障害の方への配慮なのかなとか。劇盤が無い代わりに環境音などで映画内にリズムを作ってる。
でもその全ての音はケイコには聴こえない。
四畳半

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