ケイコ 目を澄ませてのまっつんのレビュー・感想・評価

静謐に、だが確かにコロナ禍のいまを写し込んだ、時代に添う映画というフォーマットが故に実現し得た傑作。
熱くもなく、何かを過剰に背負うでもない、平熱のボクシング映画があったってよいではないか。勝敗のカタルシスからかけ離れた試合描写があったってよいではないか。
ケイコにとってボクシングは、「平熱」で過ごす日常の一部に過ぎず、それ以上でもそれ以下の存在ではない。ただ、静謐に続くその日常は、実はかけがえのないものであることを、この映画は淡々と、しかし明瞭に、我々に諭してくれる。