ゆりな

ケイコ 目を澄ませてのゆりなのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.2
「そばかす」に続き、年の瀬に観て、これまた最高だった。
余計な音楽がない、ただただシンプルで、荒川の下町と冬の寒さがスクリーンに降り注ぐ、音のない映画。

公開日が近かったこともあり「そばかす」とよく並べられているけれど、この東京の下町の寂しい感じは、年末年始いつも実家帰省がなくてむしろ寂しいなと感じる東京出身にとっては嬉しかった。
16mmフィルムのザラザラした感じもいいし、飽きさせないし、派手な映画じゃないのに画面に食い入るようにずっと観ちゃった。

私は岸井ゆきの、「おじいちゃん、死んじゃったって。」から目をつけていたので初期からファンなのだけど、こんな可愛くない岸井ゆきのは初めてだ。(褒め言葉)役者として本当にすごいしエネルギーを感じた。
パンフレットがまた粋で、ケイコが使っていたノートのデザイン!これには大興奮!

出てくる登場人物、人間味があって、みなよかった。三浦友和の厚みもよかったし、「ムーンライト・シャドウ」に出てた佐藤緋美くん出てきた!と思ったら、同じく彼女役に中原ナナちゃん出てきてすげぇと思った。

「三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE:The Podcast」で「4年前から濱口監督と三宅監督は新しい時代を作るな監督が出てくるなと思った」と言っていて、なるほどなと。
「物語で起きたことだけ出すと、悪いことが起きているのに、観終わった後は爽快感がある」も完全納得。

「そばかす」で透子が家に帰ってきてドアをガラガラ開けるシーンが定点カメラで何度も出てくるように、行き帰りで通る階段のあるいつもの道も、日によって実は変化があって、日常だなぁと。ただ何気なく何度も映るシーンなのに、ジムが閉まると決まった後半うるっと来ちゃった。

ツラツラ感想を述べてしまったけれど、一人で映画館で観て、感じて、しんみり帰って、いい映画に出会えたな〜って余韻に浸って、なんとなくまた明日もがんばろう、とベッドに入るのが一番おすすめの映画です。
ゆりな

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