ジョン

ケイコ 目を澄ませてのジョンのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.5
これはとても良い。優しく、悲しく、熱く、そして美しい。大きな感動はないけど、しみじみ心に響く傑作やった。

忙しない日々の中で、好きなことに一心に励み、優しい人たちに囲まれて過ごす幸せ。その輝かしい一瞬一瞬が、温もりのあるフィルムを通して切り取られている。
ジムの閉鎖が迫る中で、そのささやかな幸せを噛み締め、会長やジムの人々、家族の想いを胸にウーッと立ち向かうあのケイコの表情は、形容しがたい美しさやった。
ケイコの強さや弱さを誇張せず等身大に描かれていた。障害者と健常者の間に生まれる心のズレも、お互いを分かろうとする態度も、全て丁寧に描かれていて隙がなく、つくづく誠実で真摯な映画だなと思う。

音響の部分については、生活音や電車の音、ミット打ちの音などの"音"と無音がメリハリをもって効果的に演出されていた。それ故に強調された音の裏側(あるいは隙間、周辺)の余白部分に意識が向き、無音の世界が立ち現れてくるという、とても特殊な映画体験になった。
ジョン

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