三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』2022
映画に圧倒される。ここまで研ぎ澄まされているとは。漸く三宅監督作品の愉しみ方がわかった気がする。三宅監督は「在る」「居る」そのものを描く。その純化。
内面も、主義主張も乗せない。何なら、そういったものを仮託することは失礼だと言わんばかりに、小河恵子という人物を描く。ラストに少しだけ内面が溢れ出すシーンがあるが、そこを除いては頑なに内面を覗かせない。ジムの終焉も事実に過ぎない。
岸井ゆきのは常にボクサーに見えるわけではない。それでいい。ボクサーが日常生活すべてで闘志を見せているわけではない。しかし、時折何気ない瞬間に目に闘志が宿るし、逆に闘志のない笑顔でスパークリングもする。私たちは常に行ったり来たりしている。
