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ケイコ 目を澄ませてのピートロのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.9
上映時間も短く劇伴や過剰な演出もなく台詞も少ないが、街の息吹やジムの熱気、ケイコの心の葛藤が感じられる実直な作品だった。
車や生活音などのノイズを目立たせることでケイコの障害と孤独が浮かび上がっていたように感じられた。
16mmフィルムならではの暖かい光がよかった。

他のユーザーの感想・評価

言葉ではなく、
表情だけで惹きつける
岸井ゆきのの演技が素晴らしい。
しん

しんの感想・評価

3.0
面白くはない、かな

展開はほとんどない
盛り上がりとかもない

台詞とかがない分心情がわかりにくく
いろいろ描写省いてるから
よくわからんかった

ボクシングってよりも
聴覚障害ってとこにポイント当てた
映画だった

フィルムの質感はよい

こういうの好きな人がいるのは
わかるけど、評価高いなー
め...めちゃくちゃいい....めちゃくちゃ良かった....スタッフロールまで抜かりない.....
ボクシング邦画にハズレなし

と、個人的には思ってる。
下町荒川区のロケーションが8mmフィルムぽい映像に似合ってる

岸井ゆきのが良い。耳が聞こえない主人公。例え声にできたとしても、言葉を選べないような感情を、言葉にせず表す演技がすごい

ミットを打つ破裂音も縄跳びを飛ぶ足音も岸井ゆきのは聞こえないのに、三浦友和の声は聞こえるんだよなあ
りっく

りっくの感想・評価

4.5
徹底的に抑制された演出と、艶やかさな街並みの夜景と対比される社会の片隅にある下町のジムのロケーション、そして役者の身体を信頼する三宅唱と、それに応えるキャスト陣。泥臭さと品の良さが同居し、終始画面が鼓動を打つようにリズムを奏でていく、これぞ傑作。

冒頭から、点滅する街灯やネオンの光という視覚的なリズムと、縄跳びやミット打ちの聴覚的なリズムが、画面のペースをがっちりと握る。そこで、一段とリズムを刻む岸井ゆきのの小気味の良い、まるで機械のように正確なスパーリング。だが、彼女だけがこの心地の良いリズムが聞こえていない。これだけで、彼女のどうにもならない孤独が浮き上がってくる。

コロナ禍でマスクをしている見ず知らずの他者の表情や口の動きを把握することができない故に生じるディスコミュニケーション。だがそれ以前に、口から発せられる言葉の意味ではなく、その奥底にある彼女の心に寄り添うことができるか。だからこそ彼女が川辺で、リング上で、そしてジムの鏡の前で、目の前の人間と動きを同調させることに圧倒的な意味が生じてくる。

病に倒れ、車椅子に乗らざるを得ない三浦友和。彼は彼女の試合を病院で見終えたあと、ひとり自力で車椅子を動かし廊下を進んで左折する。一方で、試合に破れた岸井ゆきのは土手を駆け上がって、呼吸を整えて左から右へと画面を走って横切る。この二人の役者の身体的な動きだけで、再会の予感を漂わせ、そしてエンドクレジット後に一定のリズムを刻む縄跳びの音を挿入する。この三宅唱の絶対音感的な感覚とセンスが究極的に研ぎ澄まされたラストに痺れた。
単なる街の音がよく考えられてて好き。ちょっとノイズの乗った画もまたいい
ヒーローのいないボクシング映画なんて珍しいかも
taiking

taikingの感想・評価

4.3
こんなにも引き算を突き詰めた作品で心打たれたのは初めてかもしれない。(逆に言えばこんなにも引き算な作品も珍しいとは思うのですが)

ただ、ケイコとその周りの人々の日常を映しているだけなのにここまでドラマチックさを感じるのは、岸井ゆきのが放つ圧倒的な演技力とフィルム撮影による映像、音楽がほとんど排除され環境音で構成された音の世界、これに尽きる。流石にに今作の岸井ゆきのにはこれが「演じる」ということか。。。と圧倒された。そしてシーン全てが切り取って保存したいほどの質感の良さを放つ映像。何といっても音楽の無さ。ひたすらに放たれるミット打ちの音や電車などの環境音。

物語としても愛おしさを強く感じました。耳が聞こえないことで生じるハンディキャップや困難さもサラッと描き、ケイコの孤独さを際立たせつつも周囲の人間の愛おしさたるや。いや〜ケイコと会長が鏡の前でシャドーするシーン本当に良すぎちゃったな。。

もちろん、多くを語らず映画的ドラマチックさを求めている作品では無いからこそ、エンタメとして楽しむ側面はあまり薄いですが、こういう作品を好きになれて良かった。

このレビューはネタバレを含みます

話したって人はひとりでしょというケイコの言葉。
それに対して弟は「姉ちゃんは強い」って返すけど、休みたいことすら言えない弱さを抱えてるケイコ。
すごく人間らしかった。気持ちいい終わり方じゃないけど、それもまた良かった
BIGMcLOVIN

BIGMcLOVINの感想・評価

4.4
岸井ゆきのさんがよい
体つきからして(天賦の才を持たない)ボクサーになっている。特に背中のショット
自分のやりたいことやできること、自分の関係ないところで起こる出来事に対して簡単に分かったような気になったりせず、諦めが悪いこと
耳の聞こえないケイコがマスクから表情や唇の動きが読めず、それでも人と関わろうとすること
監督は、生きることは簡単ではないが何とか前に進めることを、コロナ禍の人たちに訴えたかったのだと思う
生きたまちの風景とそこで生きるケイコや人々の日常が映っている

タイトルも素晴らしい
映画館で観たかった作品。

キネマ旬報映画賞で主演女優賞を受賞した、岸井ゆきのの演技が光る。他の作品とのキャラクターのイメージが違いすぎて驚いた。

実話を元にした作品だが、ストーリーはそれほどドラマチックなものではない。

耳が聴こえないからというだけでなく、自分の感情を表現することが苦手なケイコの、表情での感情表現が絶妙だ。
聴覚障害者のもつ不便さ等の描写も、さり気なくて良い。

このあとケイコはどうしたのだろう? 前の試合相手と出会ったことで、またボクシングをやろうとする予感は感じられたが…確信ではない。

台詞も少ない、音楽もない、日常の生活音がBGM、…という静かな映画だが、それに不思議な安心感を与えられる。

三浦友和は、若い頃の二枚目の優等生ばかり演っていた時より、中年以降のちょっとうらぶれていたり情けなかったりする役を演るようになってからが魅力的だ。
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