チッコーネ

ポスト・モーテム 遺体写真家トーマスのチッコーネのレビュー・感想・評価

2.2
個人的には『ハンガリー連続殺人鬼』以来のハンガリー映画、第一次世界大戦後の同国が舞台となったホラーで、時代や厳寒を表すセピア調の色彩が、全編に影を落とす。
タイトルの『ポスト・モーテム』は死後の検査や解剖を示す医学用語、主人公は「死者との最後の記念撮影」を生業とするカメラマン。
その撮影デティールを垣間見れるのは面白い…、過去には同様の専門性を持つカメラマンがいたのか。
当時の東欧は遺体が腐敗しないほど寒かったのだろうが、暖房入りの部屋で撮影しているので「大丈夫なのかしらん」とか余計な心配を。
遺体役は一体だけワックス・ドール、あとは生身の役者が演じているのも物見高い。

全体的にホラーなのだが、幽霊群は実体なく影や音、振動などにより表現される。
霊障の真意もいまひとつ不明瞭で、埋葬して欲しいというだけ?
キリスト教圏の割に、演出へ及ぼす教会や聖職者の影響力も弱い。
「主人公と少女の最初から最後まで続く縁」も必然に乏しく、力強い物語とは言い難かった。
主人公の二度目の臨死体験場面は、優美な演出/美術がどことなくリンチぽい。
また監督はデティール重視で暗めの神秘志向、「ハンガリーの黒沢清」とも呼べそう。