英国政府に捕らえられた同胞を解放させるために、IRA(アイルランド共和軍)の兵士ジュードはハニートラップを仕掛けて、英国軍の兵士ジョディを拉致する。IRAの同士ファーガスは見張り役を任されるが、ジョディと会話するうちに、奇妙な友情を感じるようになる。ジョディは自分が殺されたら、ロンドンにいる恋人ディルに自分の想いを伝えて欲しいとファーガスに頼む。だが、ジョディは救出に来た英国の軍用車に誤って轢かれて死亡し、アジトは軍の急襲を受けて炎上。ファーガスは命からがらロンドンへ逃げる。そこで約束を果たすためにディルに会いに行くのだが…。
私事ですが、母親が急死する少し前に試写会で観た作品。2人で本当におもしろかったと感心したのが忘れられないです。巧妙に練られた緻密な脚本、演出。実力派の役者陣の繊細なお芝居。音楽、主題歌も素晴らしくて痺れました。ジョディがファーガスに語る"カエルとサソリ"の話。持って生まれた性を変えることは出来ない。なぜそんな話をファーガスに語り、ディルに会いに行くことを懇願したのか、中盤以降の重要な伏線になっています。ディルにまつわる驚愕の真実から作品は劇的な展開を迎えます。
主役のファーガスには、ベルファスト出身の渋い名優スティーヴン・レイ。決して男前ではなく華やかさもありませんが、飄々とした佇まいがこの作品の雰囲気にピッタリです。アカデミー賞主演男優賞候補にもなり、以後ニール・ジョーダン作品の常連です。ジョディ役にフォレスト・ウィテカー。この配役も絶妙なんです。序盤はほぼこの2人の芝居で描き切ります。友情が芽生える過程の演出は素晴らしいです。ジュード役に何やらせても上手いミランダ・リチャードソン。今作の性悪演技も秀逸。再登場時のまさかの変身もイイ。ディル役には、こちらもオスカー候補になった、今となっては伝説の俳優ジェイ・デヴィッドソン。こんな逸材に出会えたことが、この作品の奇跡だと思います。