こたつむり

クライング・ゲームのこたつむりのレビュー・感想・評価

クライング・ゲーム(1992年製作の映画)
3.9
♪ 泣き顔でスマイル
  すりきれてシャイン
  踊るならレイン

予備知識ゼロで臨んで正解の物語でした。
サスペンスでもなく。
社会派ドラマでもなく。
ラブストーリーでもなく。
根底に流れているのは「自分自身を裏切ることは出来ない」という価値観。

だから、アカデミー脚本賞も納得でした。
寧ろ知名度の低さが不思議なのですよ。
派手な展開はありませんがジワリと沁み込む物語ですからね。もしかしたら××が露呈する展開がダメだったのかな…?なんて思ってしまうのです。

確かに21世紀の昨今では慣れた話でも。
90年代は風当たりが強かったですからね。
黙殺されて当然だったのかもしれません。

それを考えると、本作を“無修正”とした映倫担当者には拍手喝采を贈りたいです。あの場面に無粋な修正を施したら監督さんの想いが薄まりますからね。英断でした。

また《彼女》を演じた役者さんも見事な限り。
演技経験がない…というのも頷けるほどに稚拙な部分もあるのですが、それが結果的に功を奏しているわけですからね。存在感も含めて、本作を作り上げた大切なピースだと思います。

但し、本作を受け入れるには“覚悟”が必要。
自分から目を逸らさない、というのは口にするほど易しくないので…。あいたたた。

まあ、そんなわけで。
地味ながらも心に残る逸品。
ちなみに本文に抽象的な表現が多いのは事前情報を仕入れてほしくないから。90年代の価値観に寄り添う気持ちがあれば、より一層楽しめると思います。

なお、本作を仕上げたのはニール・ジョーダン監督。寡聞にして知りませんでしたが『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を手掛けた御方なのですね。完成度が高い筆致に納得でした。
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