タケオ

マイ・ブロークン・マリコのタケオのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
1.5
-雰囲気で誤魔化すだけの浅薄な作品『マイ・ブロークン・マリコ』(22年)-

 第24回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門新人賞を受賞した『マイ・ブロークン・マリコ』(19年)の実写化作品。監督は『月とチェリー』(04年)や『百万円と苦虫女』(08年)などの作品で知られるタナダユキ。やさぐれ気味の不良OLトモヨ(永野芽郁)が、自殺してしまった親友マリコ(奈緒)の遺骨とともに旅に出る姿を描いたロード・ムービーである。
 85分という上映時間を、ここまで長く感じさせる映画もなかなか珍しい。本作に「漫画ならではの表現をどのようにして実写化作品に落とし込むか」という創意工夫を凝らした形跡は一切ない。書き割り程度の「設定」しか与えられていないキャラクターたちが、悪い意味で「漫画的」なテンションで行動していく姿は、いざ実写として見せられると、とてもじゃないが正視に耐えない。観賞後、観客によって物語の解釈が異なるなんてことはまずないだろう。永野芽郁が自らの葛藤や苦悩を大声で叫び、登場人物の心情は全てナレーションで語られるのだから。余白なんてものは一切なし。「このぐらいやってあげないと観客は分かってくれないんでしょ」といわんばかりのくどい演出も噴飯もので、バカにされているとしか思えず終始イライラとさせられた。トモヨが抱える疑問には、マリコが全て手紙で応えてくれているという安心設計にも、開いた口が塞がらない。そんなに簡単に答えが得られるなら、誰も苦労なんてしないだろう。ご都合主義な展開が極まりすぎて、まるで程度の低いコントのようだ。
 また、本作には貧困や虐待といった多くの社会問題が登場するわけだが、その全ての描写が「ちょっとニュースで見た」ぐらいのレベルに留まってしまっているのもいただけない。もしこれで製作陣が何かを伝えた気でいるのなら、さすがに「社会をなめている」といわざるを得ない。誠実さを微塵も感じさせない怠惰な姿勢には心底呆れさせられた。何となくの雰囲気で誤魔化すだけで、中身自体はスッカスカの浅薄な作品である。
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