アゴ

マイ・ブロークン・マリコのアゴのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

原作が良いので感想を書こうとすると原作の感想になってしまう。素晴らしい原作だった。それはおいといて。
映画オリジナル要素はいくつかあるが、一番は最後の手紙を受け取るシーンだろう。手紙の内容はシィちゃんにしか分からない。いろいろ感想を読んでいると、この部分は賛否が分かれるようだ。私は断然「賛」である。余白を残して、見た人に考えさせる。映画館を出た後も。映画はそういうものであってほしい。
私には、マリコの自殺が計画的なものだったとは思えない。おそらく、ふっと、死んでしまいたくなったのだと思う。魔が差した。そういうことは誰にでもある。
あの手紙の内容は、いつもどおり、手紙に書くほどでもないような、些細なことだったのだと思う。遺書の類ではなく、シィちゃんに聞いてほしい話。
主人公も手紙を読んで、親友のマリコとのいつもの日常を思い出して、それで安堵したのだと思う。
ここで終わればキレイなのに。ここから先は観客に勝手に想像させて、例えばブラック企業を辞めて転職活動をするだとか、明るい未来を想像させても良い。そんな風に思ったシーンから、さらに3つくらいシーンが続く。現実を突き付けられるのだ。
親友が死んだからといって、変わらない日常。それを受け入れて、歩き続ける主人公。靴は昔バイト代で買ったマーチン、もしくは営業回りで履くくたびれたパンプス。
親友からの手紙が増え、彼女はまた、親友を思い出す。少しだけ軽くなった足取りで、主人公はこれからも歩き続けるのだろう。
きれいなままで終わらなくて良かった。
まるでマリコのようだ。きれいなところだけじゃない、面倒で、離れたくて、でも愛おしい。
これからもこの映画のことを、そんな風に思い出していくのだと思う。
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