自ら命を絶った親友マリコの遺骨を強奪したシイノ。
骨箱を大事に抱え語りかけながら、かつてマリコが行きたいと言っていた岬を目指す物語。
「大丈夫ですか?」人々が良く口にする言葉です、「大丈夫そうに見えますか?」と返す主人公は強い人。
けれどマリコは普通の人と同じく「大丈夫です。」としか言えない人間。
私たちはそんな時、大抵は心配して声は掛けたが本人が「大丈夫です。」と言ったからと安心する。
けれど他人の胸のうちは簡単にはわからない。
絶望に苛まれた人を救うことは親しい友人ですら、とても難しく不可能とも言える。
それでも救うためにはどうすれば、どうしたら救えるのか永遠のテーマかも。
足を広げて腰掛け煙草をふかす。粗雑で荒々しくまるで一匹狼のようなシイノ。
一方幼少期から続く父親からの虐待により精神が崩壊しかけ、シイノなくしては生きられないマリコ。
全くタイプの違う二人の共依存関係も、物語が進むにつれ実はシイノの方が依存度が高いことに気付かされる。月並みだけど結局人って孤独のままでは生きていけないのだろう。
過去と現在、妄想と現実とが混ざりあって記憶の中のマリコを形成する。それはある意味、彼女の存在そのものを汚す行いになるのかもしれない。
しかし、残された者にとって、そこだけが彼女と繋がれる場所なのかなと思いました。