ちろる

私の親友、アンネ・フランクのちろるのレビュー・感想・評価

3.5
ここに描かれるお転婆で少しエキセントリック、好奇心旺盛なアンネ・フランクの姿は正直意外だった。
作品はアンネの親友であるハンナの視点から描かれたアンネの姿。
収容所に入れられるまでのアンネのまだ"普通の生活"をしていた頃がメインで描かれるゆえに、ラスト、収容所に入り食べ物を所望するアンネの声はショッキング。
しかし少女たちの普通の生活を一瞬で奪ってしまったこの対比こそリアルなのでしょう。

日常パートに置いてはこれが本当のことなのでしょうか、ハンナとアンネは親友同士というより、ハンナがアンネの事が好きでたまらないという雰囲気。
アンネがハンナを仲間はずれ?みたいにするシーンもあるのに、それでもハンナはアンネ、アンネと駆け寄るような印象。
これがアンネ・フランクの日常の姿ならばちょっと嫌だな・・・と思ってしまった。

収容所と捕虜交換所の塀越しのやりとりがこの作品の大切なクライマックスで、感動シーンなのかもしれませんが、それまでのシーンでアンネからハンナへの愛情が少ない気がしてなぜこんな危険を犯してまで?と思ってしまうのと、ひとりの違反行動が命とりになるあの状況の中で、アンネのために夜中抜け出すあの行為が清い行動だったのかは分からない。
でもハンナにとってはアンネを助けることは命より大切な事だったのだろう。
片やダリアをはじめとするハンナを助けてくれた同じ捕虜交換所の女性たちの優しさは印象的。
ひもじく極限の中で果たして自分ならあんな風にハンナを助けられたか分からない。
もし全て忠実な描写だとしたら、人間の愛ってすごいなと感動する。

作品としては、アンネが魅力的に描かれなかったので、期待していたものとは違ったが、他のナチスドイツの作品とはまた違う角度から見せてくれた作品だったので、興味深い作品ではあった。
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