ギルド

午前4時にパリの夜は明けるのギルドのレビュー・感想・評価

4.3
【過去の私達"他者"と共に歩む自己決定の物語】
■あらすじ
1981年、パリ。結婚生活が終わりを迎え、ひとりで子供たちを養うことになったエリザベートは、深夜放送のラジオ番組の仕事に就くことに。

そこで出会った少女、タルラは家出をして外で寝泊まりしているという。
彼女を自宅へ招き入れたエリザベートは、ともに暮らすなかで自身の境遇を悲観していたこれまでを見つめ直していく。
同時に、ティーンエイジャーの息子マチアスもまた、タルラの登場に心が揺らいでいて…。
訪れる様々な変化を乗り越え、成長していく家族の過ごした月日が、希望と変革のムード溢れる80年代のパリとともに優しく描かれる。

■みどころ
父と別れた母子家庭と、仕事で出会う少女とのお話。

エリザベートは職探しの中でラジオ番組で働く事になり、インタビューしたい相手をつなぐ仕事をしていた。
ある日、家出少女のタルラと出会い仕事終わりに外のベンチで夜明けまで待ってると言う彼女を家に招き入れる。

やがてタルラとエリザベートの息子は親しくなり、エリザベートもナンパする男と惹かれ合い離婚や孤独の傷が癒えて行くが…

この映画で「他者は過去の私達」というフレーズが引用されている。
母子家庭と家出少女、ナンパした男が疑似家族になっていく話であるが疑似家族の家族愛を見せるよりは"過去の私達だった他者"と"現代の私達"が出会う事への想いの反芻と成長を見せる映画で素晴らしかったです。
映画ではエリザベート、息子、タルラ、エリザベートへナンパした男がエリザベートの家に代わる代わる集まるも各々が自己決定していきながら巣立ちしていく。
そういった意味で過去と現在の"私達"が共に手を取って未来に向かう荷造りをし自己決定する意思を成熟させる映画で、その温かさ・成長が素晴らしい映画でした。

良い意味で言語化できない温かさがあるし、刹那ではあるものの嫌な振られ方ではない互いに想っての距離感も絶妙。
テンポ、曲のタイミング、質感、距離感のどれを取っても絶妙で出会いの中で生まれる刹那な愛情が交錯する一点においてこれほど素晴らしい映画はないと思う。

80年代のザラつき感といい温もりあるタッチでミカエル・アースの中で一番心に沁みる映画でした。
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