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遺灰は語るのギルドのレビュー・感想・評価

遺灰は語る(2022年製作の映画)
3.3
【旅する遺灰に宿る物語性の想起】
■あらすじ
1936年、ノーベル文学賞受賞作家のピランデッロが死去。ムッソリーニは、その遺灰をローマから手放さなかった。戦後、ようやく遺灰は故郷シチリアに帰ることになるが、次々にトラブルに見舞われる…。

タヴィアーニ兄弟の弟パオロが、兄ヴィットリオ亡き後、初めて発表し、ベルリン映画祭国際批評家連盟賞に輝いた。エピローグとしてピランデッロの遺作「釘」から脚色された一編も描かれる。6/23ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開。

■みどころ
ピランデッロの遺骨をシチリアへ返すお話。

ピランデッロの遺骨をシチリアへ持っていこうとするも飛行機や列車、車で輸送する中でエンジンが壊れたり勝手にトランプゲームの机に利用されたり、輸送する妨害が入るなどのトラブルに遭遇する。
シチリアへ持っていった先で起きた出来事をターニングポイントにピランデッロの短編「釘」が始まる。
本作は映画の形式的に特殊で、前半にピランデッロの遺骨をシチリアへ持っていくロードムービーが展開されていき、後半にはピランデッロの短編が始まる。前半と後半でモノクロからカラーに移り変わるも、全体的に型破りな映画構成ではある。

本作のピランデッロ遺骨にロードムービーというジャンル映画による熟成を加える事で、停滞したピランデッロの物語を前進させたような作品。
あるべき場所に帰る事で壺や政治的な意図の抑圧から開放されて、遺骨に生命を宿らせる物語。
その生命力が映画に溶け込むような不思議な感覚でした。

兄ヴィットリオへ捧げた作品でもあるらしく、ヴィットリオとピランデッロを重ね合わせた部分もあるのかな?と思える部分に、映画という墓に刻み込む意思のようなものもあった。
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