兄弟で名作を生み出してきたイタリアの名匠タヴィアーニ兄弟の弟パオロ・タヴィアーニが、亡き兄ヴィットリオ(2018年没)に捧げた作品。
主役は、ノーベル賞受賞作家ルイジ・ピランデッロの遺灰。
1934年のノーベル賞受賞後、1936年にローマで死去したピランデッロ。
「遺灰は故郷のシチリアに」という遺言は無視され、時の独裁者ムッソリーニがローマに安置させた遺灰は、ムッソリーニの死後、10年を経てようやくシチリアのアグリジェント市に帰還することになる。
その大役を任されたアグリジェント市の特使は、遺灰を大きな壺に移し、木箱でしっかり保護し運び出すのだが・・
米軍の飛行機では搭乗を拒否され、列車では大きな木箱が行方不明に?と、思わぬ珍道中に。
モノクロームの美しい映像から後半約30分は一転、カラーとなり、別の物語になるちょっと不思議な構成。
ピランデッロが死の20日前に書いた、ブルックリンのニュース記事に触発されたという遺作短編『釘』を映像化したもの。
16歳のイタリア移民の少年が、荷車が落としていった太めの釘を拾い、ベティという名の少女にまつわる事件を起こすお話。
そもそもは、本作でも引用される『カオス・シチリア物語(1984)』の終わりに「ピランデッロの灰」という物語を加えるつもりだったというのが本企画の始まりという。
そして、原題『Leonora addio(さよならレオノーラ)』はピランデッロの1910年の短編小説名で、当初はこの小説の要素が含まれていたがカットし、タイトルだけ残したようです。
色々ややこしい。笑
亡き兄ヴィットリオへの想い、ピランデッロへの郷愁、過去の不幸な歴史のフッテージ、冒頭は『2001年宇宙の旅(ボーマン船長の部屋)』のオマージュ…90歳を超えたパオロ監督の様々な想いが込められているような作品でした。
そうそう、特使と同じ列車に同乗していた若いカップルのドイツ人女性役のJessica Piccolo Valeraniさんの美しさが華を添えてます。
ベルリン国際映画祭: 国際映画批評家連盟賞
※ちなみに海外のビジュアルはホラー映画?みたい。笑;
https://www.imdb.com/title/tt13107800/
(後半の短編『釘』に登場するベティのあっかんべー顔です)