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生きててよかったのsymaxのレビュー・感想・評価

生きててよかった(2022年製作の映画)
3.7
"ずっと、ずぅーっと何もできてない…何もないんだよ、何も…"

楠木創太は、映画"ロッキー"に憧れ、人生の全てをボクシングに捧げてきた…

小手先の駆け引きを拒み、ひたすらがむしゃらに相手に向かって行くそのスタイルは、創太の身体を蝕み、ついにドクターストップとなり引退に追い込まれる…創太の夢は破れたのだ…

創太は、幼馴染の幸子と結婚し、引退後のセカンド・キャリアを歩み始めるものの、ボクシング以外に取柄の無い創太に容赦の無い社会の厳しさが襲う…

一人悶々とする創太の前に、ファンと名乗る男が現れ、アンダーグラウンドの総合格闘技の試合をオファーされる…

元プロボクサーで、主に中華圏で活躍していた異色の逆輸入俳優・木幡竜が、まるで自身の事を描いたかのような熱いストーリーが展開する本作。

木幡竜の極限まで研ぎ澄まされたその肉体と試合シーンの凄まじさは、ちょっとここ近年お目にかかった事がないくらいの迫力に加え、リングでしか生きることが出来ない男とその男に依存する女の有り得ない関係性が、創太の"狂気"と幸子の"狂気"を際立たせ、本作に一筋縄では行かない奥深さ?闇?笑い?を持たせるという…

自ら選んだのではなく、他人に強制され引退に追い込まれたこともあって、ズルズルとボクシングへの未練を引きずり落ちるだけ落ちて行く創太。

創太以外に何もないのに、創太の試合の度に吐きまくる幸子…お揃いのパジャマが無理やり幸せ感を出しているかのようで気色悪い…

壮絶なアクションと奇想天外な恋愛を盛り上げるのは、魅力的なキャラクターの脇役の皆様…特に創太の親友・健児を演じた今野浩喜がイイです。

創太と幸子を大事に思いつつも、結局二人に振り回されてしまい自分を見失っているんじゃないかと自問自答する健児を実に素晴らしい演技で表現していると感じました。

本作鑑賞中、何故かしきりに思い出したのは、塚本晋也監督の"TOKYO FIST"…共にボクシングを題材としながら、全く異なるストーリー展開なのですが、何故か似ていると感じる私…作品に内在する"狂気"に同じ匂いを感じたのかもしれません…