苦しくて上手く息ができなくなるような作品だった。
この作品で描かれている世界がまるで現実のものとなってきたような昨今。老人集団自決論を唱える学者がメディアでもてはやされたり、出生率の低下が毎年のように更新される。年金の支給年齢はどんどん先に延ばされ、公園で子供が遊ぶと苦情が来る。
老人になっても働き続け、社会の邪魔にならぬように自ら死を選ぶように明るく空々しく政府がTVでお薦めしてくる世の中が、もしかしたら現実なのかと錯覚してしまいそうだ。
まるで思考停止したように、流れ作業のようにこの事業に従事する人たちが、ある日突然今起こっている事は自分自身と無縁なことではないと気がついた時、それはもう取り返しがつかないところに来てしまっている。最後倍賞千恵子演じる老女の目に映る物はなんなんのだろうか。少なくとも希望ではない。
