このレビューはネタバレを含みます
【 全国高齢者“死”援キャンペーン 】
タイトルでもある、『プラン75』とは何だろう。何のことはない、国が、厳密には国の大人たちが、高齢者を煙たがり合法的にあの世へ送る施策である。「大人」と出したのは、純粋な子どもは、そのようなことはしないからだ。高齢者が手を振れば、笑顔で振り返す。これが純粋な子どもだというものだ。
ヘンなことを考えてしまうのは、いつだって大人たちだ。
政府の人間が嬉々として、『プラン75』を高齢者に提案する光景は、誠に悲しかった。生存が本能としてインプットされているヒトに適する施策ではない。実に不道徳だし、生命へのリスペクトを欠く行為である。
だからこそ、若干二十歳と思しき女性職員（河合優実さん）が、泣くのを堪えてミチさん（倍賞千恵子さん）を止めようとしたことに嬉しさを感じた。男性職員（磯村優斗さん）も最後に、タマシイを取り戻したようで安心した。
高齢者になっての孤独。その不安たるや、筆舌に尽くしがたい。それを理解する上では、この傑作はたいへんな啓発効果を発揮することと思う。素晴らしい作品だった。
そして何より、ミチさんがご無事で良かった。生きてこそ人生。
高齢化社会ではなく、長寿社会と視点を変えたいものだ。
