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裸足の1500マイルのtakのレビュー・感想・評価

裸足の1500マイル(2002年製作の映画)
4.1
オーストラリアにおける「白豪主義」政策とはどんなものだったのか、そして先住民族アボリジニーの生活や習慣を正面から取りあげている点で、実に貴重なフィルムだ。

純血のアボリジニーは隔離して数を減らすに任せ、白人との混血は施設に入れて職業訓練を施す。8代もすると民族の特徴はなくなる。

ここまで白人は横暴をしていたのか!と怒りを覚えること必至。そんな考え方が70年代初めまでまかり通っていたとは!。そんなオーストラリアの歴史を少し予習しておくと、感想はまた違ったものになることだろう。

しかし、この映画が伝えたいのはそうした政治的な告発ではなくて、親と子の絆。子供たちの母親に会いたいと思う気持ちは、途方もなく遠い道のりをも乗り越えさせた。実話の映画化というと、観客は意識してしまって”映画以外のところで”感動させられることがしばしばある。この映画は観客に涙を誘う為に作られた、いわゆる感動作とは違う。監督を始めオーストラリア出身のスタッフが、現実を伝えよう、親子の姿を伝えよう、とその一心で作った誠実さが感じられるのだ。

正直これまでのフィリップ・ノイス監督作は嫌いだ。初めて観た「ラスト・ジゴロ」といい、「パトリオット・ゲーム」といい、「硝子の塔」といい、どれも物足りなかった。でもこれは全く違う。監督の出身国への思い入れがあるせいなのだろうか。また、同じくオーストラリア出身のクリストファー・ドイルのカメラがまた絶品。追っ手を逃れて少女たちが走る夜明けの空。砂漠の陽炎に揺れる少女たちの陰影。何もない広大な大地。自然の美しさと、歩き続ける少女たちには絶望的にも感ずる広大さを、カメラは見事に描き出す。ピーター・ガブリエルの音楽も強く印象に残る。憎まれ役ケネス・ブラナーも好助演。
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