イチロヲ

座頭市海を渡るのイチロヲのレビュー・感想・評価

座頭市海を渡る(1966年製作の映画)
4.5
斬り捨てた者たちを弔うべく四国八十八箇所巡りを決心した座頭市が、土地の支配を企んでいる馬賊(山形勲)と対峙する。勝新太郎が盲目の侠客を演じている、人気時代劇シリーズの第14作目。

「報復の連鎖からの脱出不能状態」という境遇はこれまで通りだが、四国の集落へと舞台を移し、馬喰(ばくろう・家畜商のこと)が敵対相手として登場する。うっそうとした森林地帯が主なる舞台のため、フォトジェニックな映像美が収められている。

市の正当防衛を許容する村娘(安田道代)と非暴力主義者の名主(三島雅夫)を通して、「自衛としての暴力行為」「日和見主義の危うさ」を問題提起。人を斬らなければならない場面を幾度となく経験している座頭市が、自分のすべきことを模索していく。

不条理劇に取り込まれた座頭市が、あれよあれよといううちにスケープゴートとなってしまうため、いたたまれない気持ちにさせられる。ヒロイン以外の誰からも感謝されないラストが象徴的であり、「後に引きずる系」の座頭市として完成されている。
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