座頭市の業と人間性を改めて噛み締める一作。
今回のいっつぁんは供養のお参りに訪れてて、人を斬り続けてきた自分の業を自覚してるんだよね。だけど結局仕込み杖を抜いて誰かを斬らなければならなくなる、そんな逃れられない宿命を背負ってるいっつぁんが儚く哀愁に満ちている。
悪役も特に憎たらしいし凶暴なんだけど、今回はそれと同時にいっつぁんに全てを押し付けようとする事なかれ主義の農民達が印象的に書かれている。守られる側を「何もせず市を利用しようとする浅はかな者達」として描写してるのは座頭市だと新鮮。
贖罪の為に訪れた先でもいっつぁんはヒロインを除けば殆ど孤独で、粗暴な賊に狡い農民とろくな奴らに会えないのが悲壮感漂う。いっつぁんの言動からは最早諦観のようなものさえ感じ取れるけど、それでも「賭け」をして人間への絶望を拒絶したのが印象深い。
いっつぁんの業の書き方は凄く好きだけど、そちらに重点を置いてた分殺陣はそこまで印象に残らなかった。ただ矢の両断や一作目を彷彿とさせる暗闇での抜刀は好き。展開もなんとなくのんびりしてた印象。