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(ハル)のtamagoのレビュー・感想・評価

(ハル)(1996年製作の映画)
5.0
道具立ては、パソコン通信というインターネット前夜の古いチャット、メール通信ではありますが、そのやりとりを画面で表示するという斬新な演出にまず驚きました。
やっぱり日本語って、読ませることに優れた言語だなと改めて思いました。洋画の字幕のように慌ててサラッと読むのとは全く異なり、PC画面に打ち込まれた文章をじっくり観客に読ませることにより、半分小説を読んでいるような感覚になり、映画を観ながら小説を読んでいるような不思議な感覚になりました。普通の映画でのモノローグを画面で読んでいるような感覚にも近いかも。
それにより、登場人物たちの心情が深く伝わってきて、冒頭から一気に作品の世界に引き込まれていきました。画面に文字が打ち込まれている際に流れる劇伴も更に心象風景を感じさせる心地よさがありました。

メールだけのやり取りでも、心を許すことができれば、そこにはリアルな人間関係が出来上がってくると思えて、決して映画の中のお話だけとは思えませんでした。
主演の二人は言うまでもなく、素敵でしたけど、ローズ役の戸田菜穂さんに助演女優賞をあげたくなる、いいキャラでした。

意外とちょいちょいクスクスと笑わせる場面も多くあったけど、途中からは今は居なくなってしまった人のことも思い出されたりして何回も涙が込み上げてきて、でも観終わった後に幸福感に包まれる忘れられない作品になりました。
この作品を教えてくれた、さりさりさんに感謝してます。
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