さよなら僕のマクガフィンたち

(ハル)のさよなら僕のマクガフィンたちのレビュー・感想・評価

(ハル)(1996年製作の映画)
3.7
素敵!

1996年っていうと、まだネットが普及する前かな?直後かな?
ネットコミュニティとメールの使い方が当時にしては画期的だったことは想像に難くない。

メールのやり取りのみで物語が進み、最後まで二人がフィジカルとして出会わないタイプの恋愛映画。メールのやり取りは斬新かもしれないが、それぞれの日常を相手への文章に投影し、虚構といっても差し支えない相手に自分の想いを依存していく。
類似の事象はもしかしたら遠距離恋愛でも起こりうるし、文通とかでも起こりうる。
体育会系のハードなハルと、内気なホシ。対照的な2人、過去を乗り越えようとする2人という意味でもかなり普遍的なテーマを扱っているのではないか。

文章で物語が進む割には、文章には嘘があるし、見栄もある。意外に物で心情が表現されるのも良い。例えば、この映画の白眉ともいえる、新幹線の待ち合わせすれ違いシーンですよね。あれでお互いの存在をリアルに感じた後、ホシの本棚には、村上春樹に挟まれて存在していた亡くなった元彼の帽子がなくなる。
こういった描写は見事だし、何より、言葉以上にメールを見返した際にお互いに変化しあい、成長し、お互いの存在が大きくなったことがわかるところが恋愛映画として素晴らしい。

ちなみに、今まで見た深津絵里の中で一番かわいい。