chunkymonkey

ドント・ウォーリー・ダーリンのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

3.5
「ブックスマート」のオリヴィア・ワイルド監督にフローレンス・ピュー×ハリー・スタイルズ主演の超絶オシャレなサイコスリラー作品。「言われているほど全然悪くないじゃん。面白いよ!」というのが一言まとめ感想です。ただし、非常に凝った演出を重ねた割には終盤の種明かしやメッセージが「あれ?」と拍子抜けするほど心に沁みず批判する方の気持ちもわかる。けどエンタメとして十分◎だと思うよ、な映画でした。

舞台は1950年代のアメリカ・カリフォルニア州。いわゆる"Make America Great Again (MAGA)"はこの時代を指していると言われていますが、あまりにも完璧な「アメリカン・ドリーム」が体現された小さな住宅街ヴィクトリーの文字通り夢のような生活。ここに暮らす男性は全員、街と同名の会社に勤めており、女性は皆専業主婦です。全てが美しい理想的な核家族の生活に幸せいっぱいだったアリス(もちろん"不思議の国のアリス"に由来してるよ)ですが、次第に不可解な出来事に気づいていき...

全てがオシャレに整っているヴィクトリー・タウンの生活と、交互に挟まれる不気味で怪しい不思議な体験が、とにもかくにも美しくてめちゃ魅了される!!同じリズムでやや飽きるほど繰り返されるけど、目の保養で心地いいのでずっと観ていたくなる。

フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、クリス・パインという豪華俳優陣の皆様、なかなかよかったです。ただ、場面設定が立っているので恐らくそれなりの美男美女が演じれば誰がやっても同じだったかなという気も。が、ハリー・スタイルズの絶妙に可愛らしくタップに見えないタップダンスは見どころ!イギリス訛りを抜くのは無理だったのか、共演者のセリフでわざとらしく"Brit"と言わせてました。

全体にわりとよかったと思うのですが、驚くほど本作が批評的に低評価なのは以下二点によるかもしれません。

・マトリックスやバニラ・スカイ、はたまたマーヴェルなど一見本作とは相容れない世界観をふんだんに取り入れた演出が非常に凝っています。が、イマイチ評価されないのは、その力の入った◎モチーフの演出が春頃に大ヒットし絶賛された"Everything Everywhere All at Once"とかぶってしまっていること。おそらく製作時期的に真似したわけではないと思うのでこれは素直にお気の毒だったなと思う。

・メッセージは「自分の人生は自分でコントロールしなければ幸せにはなれない。」、おまけでちょっとのフェミニズム+MAGAに対する批判。アリスがヴィクトリーに行くことになった種明かしと合わせて「なるほど~、そういうことね。」となるのだが、どういうわけかそれ以上の感情が湧き上がってこない。前半に思わせぶりな演出をやり過ぎて期待値が上がったせいか、終盤のメッセージがやや説明的になってしまったからか... しかも謎はそれでも結構放置されてる。

セットデザイン、衣装、音楽などセンスが研ぎ澄まされた美しい世界観、「どうなってるんだろう?」と引き込まれていくワクワク感は素晴らしく、とても楽しいエンターテイメントでした。2回観る必要はないタイプの映画ですが、一度はぜひ音響や映像のイケてる映画館での鑑賞をお勧めしたい!
chunkymonkey

chunkymonkey