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ドント・ウォーリー・ダーリンのmのレビュー・感想・評価

4.5
芸能ゴシップの餌食になってしまい、冷静な評価を受ける機会を奪われた事が残念なオリヴィア・ワイルド監督第2作。このゴシップ騒ぎで将来有望なオリヴィア監督の未来に悪影響が残らない事を願いたい。

画と音で不穏さを漲らせてくる監督のテクニックは映画監督としての力量の確かさを感じさせる。演出はキレッキレだし撮影や音楽も素晴らしくて、『何故彼らはこういう事をしてるのか』という理由も現代の男性のある部分を鋭く突いていて凄く良いなと思うんだけど(ここには前作から続くフェミニズムの視点がある)、残念ながら脚本に問題がある。
中盤のタメがやや長い(そういう話なのはみんな薄々分かっているし)・真相部分のギミックが謎すぎる・そして真相が分かってからが短すぎて、特にラスト5分くらいの展開が極めて雑(急にハリウッド映画らしくなりすぎて演出も変になる)。真相が分かるまでの中盤をもう少し短くして、真相発覚後の展開をもう少し描くべきだったと思う。その展開こそが作り手のこのテーマへの解答になったはずだから。崩壊が始まってからの各々の女性達や一部の男性の反応には多種多様さがあって(個人的にはある男性キャラクターの弱さが露呈する瞬間が良かった)、そこによりテーマを深く描ける可能性が垣間見える故に歯痒い。

フローレンス・ピューは熱演。彼女の持つ強さが役にハマる。
ハリー・スタイルズの役は本当はシャイア・ラブーフが演じる予定だったのだけど、観ながら何故この役がシャイアなんだろう、ハリーみたいな真っ当な男前の方が合う役なのにと思っていたら終盤で納得。でもハリーもちゃんとこの役をやり切っていて好印象。「ダンケルク 」といい、情けない役をちゃんとやっているのはとても良いと思う。クリス・パインもこういう人がやるからこそ良かったというのはあるけど、もっと崩してほしかったというのはある。
ジェンマ・チャンにキキ・レインと良い役者が脇を固めているのも嬉しい(でもジェンマの結末はもっとちゃんと描くべきだった)。
監督であるオリヴィア自身がかなりおいしい役を演じているのはちょっとなと思うけど、実際巧いので結果OKとは思う。






でもねピューさん、現場で何があったにせよ監督に何か問題があったにせよ(←実際どうかは分からないからあくまで例えの話です)、SNSや映画祭でそれをほんの少しでも匂わせるような事は絶対にするべきではなかった。仮に偶然や不幸が重なって誤解されたのなら弁明するべきだった。面倒だけど今の時代はそういう振る舞いが求められるし、主演俳優には多くの人が関わった映画を背負う責任がある。(正直某作の『別に』騒動に関しては映画がかなりアレだったし監督の放置も駄目だったから俳優側に同情的なのだけど、今回の件に関しては)映画の主演俳優としては残念な対応だったと思う。
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