昔、少し気になっていた子がいて、その子が「この映画好き」と言っていたので、その週の休みの日に早速レンタルをして観てみました。
最初は作品のテンポや雰囲気について行けず、しばらく時間が経つまで、これがミュージカル映画とも気付きませんでした。
しかし、ストーリーが進むにつれ、僕もこの世界観に慣れはじめ、"Because We Can"の頃には純粋に物語を楽しめるようになり、"Sparkling Diamonds"を歌うニコール・キッドマンの美しさに見惚れ、作品の虜になっている自分がいました。
「休み明け、これで話すことができる」と、僕は思いました。「映画を観たよ」「僕も好きな映画だよ」って言いながら、彼女に話しかけるきっかけができたと思ったのです。
そんなことを考えながらも物語は進みます。
ユアン・マクレガー演じるクリスチャンは、ニコール・キッドマン演じるサティーンに一目惚れをし、恋に落ちます。クリスチャンは恋をした衝動を抑えきれず、サティーンに"Your Song"を贈ります。
"人生は素晴らしい、君と分かち合う世界"と…
その歌を聴きながら、僕は泣いていました。息も上手くできないくらい泣いてる自分がいました。
"これは僕の歌だ"
僕はそう心の中で呟きながら、このとき気付いたのです。自分はいま、恋をしているのだと…
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今となれば、くすぐったい思い出です。しかし、当時の僕はその恋に一生懸命で、人生で初めて映画のサントラを買って、iPodに入れて何度も聴きまくったり、また必ず観るだろうと「ムーラン・ルージュ」のアルティメットエディションのDVDを買ったりしていました。
でも結局、この物語と同じく、僕の物語も悲恋で終わりました。当然、誰もが経験するように、心の奥に失恋の痛みが突き刺さります。僕はそれ以来「ムーラン・ルージュ」を観ることはありませんでした。それどころか恋愛映画自体に興味が持てず、ずっと手に取るのを避けて来たのです…
最近ニュースで、今年「ムーラン・ルージュ」がミュージカル舞台化され、初演はボストンで、来年の2019年にブロードウェイ、翌2020年には日本で公演されるとの噂を耳にしました。
僕は、あの世界観が舞台で、しかも日本で観れるのなら絶対に行きたいと思い、そうしたら無性にこの映画が観たくなり、棚の奥からこのDVDを見つけ出し、なんのためらいもなく、無造作にパッケージのフィルムを剥がした自分がいました。
月日が流れ、あの恋も今はくすぐったい思い出。こうして過去の出来事として懐かしむ記憶の1ページとなります。本当、時間は万能の治療薬です。
"人がこの世で知る最高の幸せ、それは誰かを愛して、そしてその人から愛されること"
「ムーラン・ルージュ」の中で掲げるテーマです。もちろん当時の僕は、この"最高の幸せ"を強く望んでいました。しかし、今となれば、
"自分が好きな映画をあの人も好きでいてくれたら…"
そのくらいが丁度いい"幸せ"だと感じます。
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今回、この作品を観ているうちに当時の記憶が蘇り、頭から離れなくなってしまいました。結果、個人的なことを書き過ぎてしまい、本当にすみません。
ここで改めて、この映画のレビューらしいことを言わせていただきますと、今回数年ぶりにこの映画を観た感想は、やっぱり素晴らしい作品。僕好みの大好きな映画でした。
ニコール・キッドマンの美しさ。ユアン・マクレガーの歌の上手さ。バズ・ラーマンの革新的な演出。癖のあるミュージカルシーン。そして、一貫して愛を叫び続けるストーリー。今まで観たことのない唯一無二の映画がそこにあります。
クライマックスで、ニコールとユアンが二人で歌う"Come What May"がこの映画の美しさを決定づけます。その美しさの全てが僕の心に突き刺さります。僕が大好きな物語です。改めて観ることが出来て本当に良かったと思います。
ちなみに今回作品を観て気付いたのですが、冒頭のロートレックの部屋で"カクテルピアノ"が置いてありました。あれって「うたかたの日々」(1968年)のオマージュですよね。
「うたかたの日々」はどうしても、もう一度観たい映画なのですが、映画館ではもちろん、レンタルでもセルでもネット配信でも観られず、どんどん僕の記憶の中で薄れていきます。
いま、その「うたかたの日々」を観たときの思い出が、少しずつ蘇ってくるのですが…
その話はまた、別の機会にさせていただきます。