このレビューはネタバレを含みます
過去に置き去りにしてしまった娘との絆を取り戻す作品、ではあるけれどもかなり宗教的な要素が絡んできて面白かったでござる。
真実を分かっている自分たちが他人を“救ってやる”という、選民思想というか優生思想という様な上から目線のクソ宗教の欺瞞性をガッツリ謳いあげてくれるだけでもう面白い。
主人公チャーリーの恋人アランは宗教の教義に心を縛られ病んだ末に亡くなっているのに、そんなチャーリーにそれは教義に背くお前達自身が悪いのだと言っちゃう宗教って何だろうと思っちゃうわ。
娘ちゃんエリーのトーマスに対する行動が果たして善意ありきなのかは作品上では判断出来ずらくされているように思う。ちょっとその意図と意味合いをしっかり掴めてないのだけれど、野鳥への餌やりの皿を割ったのは彼女の様にも思えるし。
ただ、大事なのはチャーリーが彼女のすることを前向き肯定的に捉える、つまり信じ続けるということなのかなと。彼女のノートに書かれた言葉やSNSに発信されたことは、何にせよ素直な感情の発露、正直な感想であることには間違いない。
何故、心の思いに正直であることに重きを置いているのか。それはチャーリーとアランが行動的には自分の心に正直でありながらも、それぞれ教義や恋人の死に対する罪悪感を拭えなかったことに対する思いなのかな。だから他者に肯定されることが大事。
小説「白鯨」に関しては未読なので、それが表すメタファーに関しては良く分からない。
鑑賞しながら、作品の構造がもう完全に舞台劇っぽいなと思ってたらやはり元はそうだった。