ラーチャえだまめ

ザ・ホエールのラーチャえだまめのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
5.0
『人間は「死に際」の人の前では、本当の意味で優しくなれる「素晴らしくも残酷な生き物」だと痛感させられる1本』




まず「限られた空間」×「限られた登場人物」だけで約2時間の長丁場を「完全に持たせている」鬼才ダーレン・アロノフスキーの匠な才×魅力溢れる登場人物を演じたキャストたちの素晴らしい演技力に脱糞、あいや脱帽であります。そして売れたなぁ〜“マキシーヌ”こと「ストレンジャーシングス」のセイディー・シンクですよ皆さん!?もうね、この子に“ちょっとアンニュイで悪人になり切れない不良”の役やらせたらピカイチなんじゃないかと思うくらい、今作ではスマホぽちぽち世代の“現代っ子”ですが、疎遠となっていた父親から突然連絡が来て……と難しい役どころの娘エリーを演じております。


私はリズ、リズに共感しちゃったな〜。食料はチャーリー自らデリバリーとってるものもあるけど「“リズが”チャーリーに食料を与えている」ココ!ここが大きなミソなんですよ!!これって矛盾してるじゃないですか?リズはチャーリーを救いたい、病院に連れて行きたい、これ以上食べてほしくない。けどチャーリーにとっての最たる願いの為に、心を鬼にして毎日チャーリーに何人前だよってくらい大量のケンタッキーに巨大なブリトーを渡さなければならない。彼の死に自分も関与しているという自覚を持ちながら……


彼女は毎日泣きそうになりながらチャーリーの面倒を見る。こんな辛さありますか?そのリズを見事に演じたホン・チャウが“助演女優賞”を獲らなかったのが不思議でならない。ちょっと今年のアカデミー賞は「エブエブ」に全部持っていかれた感が強いというか、いくらなんでも他の作品にももう少しスポットライトを当てる上でも評価を分散して欲しかったなーと。確かにジェイミー・リー・カーティスも素晴らしい女優さんですけど、いやあのキャラに比べたら助演はホン・チャウでも良かったんじゃないか?それくらい彼女の演技には心を打たれしまった。


チャーリーの「人間は素晴らしい」のセリフがこの映画の全てを物語っているんじゃないか。この物語は人生を見失い身を滅ぼした者が、もう元通りに修復などできず何もかもが「手遅れ」な状況で、それでも最後に何か一つだけでも、例えそれがただのエゴだとしてもいい「何かを成し遂げた」という実感が欲しい、そのために海の中でもがき続ける「鯨」のお話なのです…。



↓ブログにもあげました(ネタバレなし&ネタバレ・考察)↓
https://www.edamame-movie.com
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