"嫌悪感"
ひさびさのヒューマントラストシネマ渋谷へ。
ちょいちょいタイムラインに本作のレビューが浮上してくることに興味を持ったのと、本日の帰宅時間に合うレイトショーがコレしかなかったので鑑賞。
✏️烏が人を産む
物語の主人公は、フィンランドに住む12歳の少女・ティンヤ。
ティンヤは、母・父・弟の4人家族。
一見すると非常に仲睦まじい幸せな家族のようだが、ティンヤの母はいわゆる「教育ママ」であり、かつ世間からの承認欲求が非常に強い性格。
父もこれまた包容力のある良き父のように見えるが、その実「ことなかれ主義」であり、娘の「異変」に深く首を突っ込まなかったり、果てには自身の妻の「秘密」さえも黙認してしまう。
弟・マティアスは、ティンヤとは違い母からの愛情をほとんど注がれていない。
彼はどちらかといえば姉のことを「目の上のたんこぶ」としか見ていないようだ。
…この家族、何かがおかしい。
いわゆる「仮面家族」的な違和感と同時に襲い来るのが、ティンヤが森で拾ってきた「カラスの卵」から”孵化”した謎の生物に対して抱く「うすら気味悪さ」。
こいつは人間なのか、カラスなのか…?
絶妙な不気味さ、でも少し見慣れてくるとどこか可愛らしくも見えてくるような、実写と見事に融合したCGで表現される”生物”とティンヤの触れ合いが何とも危なっかしく、それでいて「子を育てる母」の尊さのようなものも感じさせてくれる。
✏️日常に潜む”悪”
そんな何をしでかすか分からない”生物”の一挙手一投足にハラハラするのも良いが、自分はどちらかというとティンヤたち「家族」の在り方に対して、大変な嫌悪感を抱いた。
(特にティンヤの母)
今風の言葉で言えば完全に「毒親」の母、見て見ぬふりを突き通す父に、姉を心から疎む弟。
そんな状態なのにも関わらず、母は「キラキラな日常」としてその様子を世界中に発信している。
クライマックスにて、ティンヤは非業の死を遂げてしまう。
(このあたりの展開は少し単純すぎる気も。もうワンパンチ欲しかった)
しかし、例の生物…もとい「ティンヤとなった物」がゆっくりと起き上がる。
ここで映画は終わるが、あの母の性格なら、何事もなかったように「ティンヤとなった物」を家族に迎え入れるだろう。
なんなら「新しい動画のネタ」くらいにしか思ってなさそうだ。
これが嫌悪感でなくてなんなのか。
そのほか、単純に見た目として・また生理的に気持ち悪いと映るシーンも目白押し。
☑️まとめ
仮面家族、不倫、無関心、嫉妬、虐殺、エゴ、利己心…
そんな「なるべくなら見たくない人間の嫌な部分」を集めて混ぜて、ごった煮にしたような作品。
あえて手垢のついた表現をするけど、やっぱ一番怖くて恐ろしいのは人間ですわ。
昨年日本でも公開された『ビバリウム』と同じく、「鳥の習性」をよく理解した上で鑑賞すれば、もっと色々な感想や考察をすることができたかも?
思いがけず、上質なホラーに出会うことができた。
🎬2022年鑑賞数:60(24)
※カッコ内は劇場鑑賞数