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ハッチング―孵化―のNeCoのネタバレレビュー・内容・結末

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

レイトショーにて鑑賞

初手の美しい音楽と共に華奢な少女がバレエをするシーン、触れたら壊れてしまうような儚さを感じて掴みとして巧い

ことあるごとに写真に収めたり、動画を回したりするSNSに取り憑かれた現代の人間を皮肉る姿勢が一貫している映画

家に迷い込んだカラスが拘り抜いて集められた家具を滅茶苦茶にして、それに憤慨した承認欲求の塊である母親がカラスの首をへし折ってしまう
嫌な予感がするとは思ったけど、この映画のキーパーソンというか、ブレイカーは完全に母親だな
殺されたカラスの卵を少女が拾って育む話

娘のバレエの大会、毎日の食事、それら全てが評価されるための道具としてしか見れない痛い母親、見て見ぬふりを続け、表面上の幸せを享受し続ける父親、不躾で配慮が欠ける弟
そんな歪な環境下で必死に幸せだと思い込む、いたいけな少女の物語
母親の浮気やバレエの大会出場権を狙うことへのプレッシャー、それらの悲しみを卵に涙という形で訴え続ける

卵から孵ったものが徐々に少女の姿に近づいていく
少女の負の感情に共鳴して当該者に危害を与える場面では、生物的には妥当な行動も人間界では異端とされることも多い不思議さを実感した
厄介な存在であれど、自分が育てたという自負から突き放しきれない少女の葛藤
自身の命を犠牲にしてまで守り抜くという、母親との対比も良い

母親のラストの笑み、彼女の内にある狂気さからして、自身で娘を手にかけてしまったものの、代わりに完全に娘の姿となった異形のものを「素敵な生活」の一員として引き入れそうで心底嫌悪感に見舞われる

CGで異形のものが出てくるスリラーはチープになりがちだが、この映画に関しては鳥の姿から人間の姿に変貌していく様だとか、不快感や気味の悪さが巧く表現されていたなと関心する
ホラー特有の驚き要素も散りばめつつ、毒親描写も凄まじく、スリラーとしての出来も素晴らしい
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