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ハッチング―孵化―のEirainのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.2
劇場公開発表時から楽しみにしていた北欧ホラー。祝DVD発売ということで、早速購入して鑑賞。

舞台は自然豊かな北欧の地、フィンランド。主人公の少女ティンヤは、幸せな理想の家族を動画にして配信することに夢中な母親の期待に添うため、我慢する日々を送っていた。ある日、ティンヤは森の中で"何か"の卵を見つける。家族には秘密にして自分の部屋に持ち帰るが、卵は、まるでティンヤの抑圧された気持ちを栄養素とするかのように、徐々にその大きさを増していく。そしてティンヤの涙が卵に零れ落ちた時、卵から"何か"が生れ落ちる―――。

「"幸せな理想の家族"に抑圧された少女が孵した"何か"が、幸せを演じるその仮面を破壊していく」という感じの作品を期待していた(実際そういう感じの宣伝文句だったと思う)のだが、残念ながらあまりそのようなテーマ性を感じさせる内容ではなかった。「母親→ティンヤ」と「ティンヤ→"孵化したモノ"」の親子関係を並べて「子に理想を押し付ける/親の気持ちに応える」という構図を作っていたのだろうが、その構図を用いた魅せる展開があまり感じられなかったように思う。もっとテーマにリンクさせる展開にして欲しかった。

とはいえ、北欧ならではの「美しい自然の中で描かれる狂気/異形」を味わうことが出来、雰囲気だけでも十分楽しめる。一見の価値あり。
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