ノラネコの呑んで観るシネマ

はい、泳げませんのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

はい、泳げません(2022年製作の映画)
4.7
うう、予告からライトなコメディだと思ってた。
こんな悲しくて辛い話だとは。
長谷川博己演じる哲学者の小鳥遊が、綾瀬はるかがコーチを務める水泳教室に通い始める。
生まれながらのカナヅチである彼が、泳げるようになりたいと思った訳が、徐々に明らかになってくる。
これは過去のある記憶を失ったことによって、そこから一歩も進めなくなってしまった男の再生劇。
水泳の上達は、人生の歩みに似ている。
実は自分も大きな傷を抱えている、綾瀬コーチの丁寧な指導が、主人公の心の中にある凍りついた塊を、少しずつ溶かしてゆく。
ハードな人間ドラマだが、主人公とコーチや生徒のおばちゃん軍団との軽妙なやりとり、スプリットスクリーンなどを駆使したトリッキーなテリングで、可能な限りドヨーンと落ち込むのを避けている。
失った過去は決して元に戻らないが、全てを胸に前を向いて生きてゆくしかない。
予告編の印象とは全く違った作品だけど、仕上がりは今年のベスト級。
残念ながら、あまりお客が入ってないようなので、なる早で観るべき。
ところで作品中の現在が、2015年設定なのは何でだろう?
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1528.html