"魚心あれば水心"
映画館に置いてあった本作のフライヤー(B5版のチラシ)が非常に特徴的で興味を持ち鑑賞。
あと、綾瀬はるかさんが出ているので。
ちなみに、高橋秀実氏による原作は2005年発行とけっこう前。
なぜ発行から20年近く経とうとしている今になって映像化されたのか。
大学で哲学を教える教師・小鳥遊雄司(長谷川博己)は大のカナヅチ。
雄司はカナヅチを克服するため、スイミングスクールに通うこととなる。
そのスイミングスクールでコーチを務める薄原静香(綾瀬はるか)と個性豊かなオバチャン集団、前妻の美弥子(麻生久美子)との会話を通し、雄司は自らの過去と向き合う。
雄司は自らの胸に秘めてきたトラウマを、そしてカナヅチを克服できるのか…
✏️人生とは泳ぐこと
想像していたよりもかーなーり重めのテーマだった。
フライヤーの感じから、もっとポップでコメディなタッチかと思っていたのだが…
そのへんの「気持ちの切り替え」があまりうまく行かず、作品世界にあまりハマることができなかった印象。
個々の人物のキャラクターづくりは良かった。
綾瀬はるかさん演じる静香コーチ。
やはり彼女は、現在放送中のフジテレビ系ドラマ『元彼の遺言状』で演じているエリートな感じのキャラクターよりも、ハツラツとして前向きなこういう感じの役がよく似合っている。
泳げない理由と理屈ばかりを述べ、「無理無理!」とわめく雄司に対して静香コーチが説く「泳ぐための心構え」はどこか「人生の心構え」とも取れるようで。
水の中で人間は実に無力な存在だ。
懸命に腕と足を動かし前に進むか、脱力して身をゆだね浮かぶことしかできない。
後ろに戻ることは基本的にできないし、力を入れすぎると沈んでしまう。
これって、人生という道における人間の在り方そのまんまだ。
どこか人生を達観したような静香コーチの言葉は、雄司の人生をも少しずつ軌道修正していく。
雄司と同じスイミングスクールに通うオバチャン集団も見ていて楽しかった。
そういえば自分が小さいころに通っていたスイミングスクールにも、あんなハデハデな水着を着たオバチャンがいたなぁ…
物語とは関係ないけど、昨年公開で一時話題となった『偶然と想像』に出演していた占部房子さんが出ていたのには驚いた。
対して雄司を演じた長谷川博己さんの、どこか「舞台演劇っぽい」演技はあまりハマらず。
☑️まとめ
作品としての魅力がないか、と言われるとそんなことは決してないのだけれど、消化不良な感じは否めない。
どちらかと言えばこれを序章として、「雄司と静香コーチ、それぞれのその後」を見てみたい気も。
あとは、静香コーチが抱えるトラウマに関するエピソードももっと絡めてほしかった。
外を挙動不審な感じでオロオロと歩く綾瀬はるかさんがかなり良かったので。
子どもを持ったことある親御さんならツボに刺さるのかも…?
ちなみにワタクシは、人並みには泳げます。
🎬2022年鑑賞数:73(28)
※カッコ内は劇場鑑賞数