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グッド・ナースのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

グッド・ナース(2022年製作の映画)
3.7
ケツアゴのジェスカ・チャステン。

ヘルスケアシリアルキラー、チャールズ・カレンを題材にした犯罪ドラマ。
チャールズ・カレンをエディ・レッドメイン。
チャールズに友情を抱きつつ逮捕に協力した看護師エイミーをジェスカ・チャステンが演じています。
ふたりの演技がとても良い、巧い。
特にエディ・レッドメインが素晴らしく巧い。

シングルマザーの看護師エイミーは心筋症であることを隠してパークフィールド記念病院で勤務を続けていた。
保険未加入のため診療の費用は高く、娘は幼くシッターを頼み、生活はかつかつ。
いつ発作が起こるか分からない状態だが生活のため仕事を休むor止めることは出来ず、心が休まる日が無い。
そんな頃、病院に新人が入ってきた。
それがチャールズ。
彼は彼女の状況を理解してくれ、公私で支援の手を差し伸べる。
しかしある患者の突然の急死に病院の委員会が動き、警察の捜査が入る。
その流れでエイミーはチャールズの犯行を知ることになるのだが。

エイミーにとって「サポートするよ」と言ってくれたチャールズ。
無援の状態からの計り知れない安堵を得たのだろうなあ……と思う。
しかし彼の信頼と友情より、罪を告発する方法を選ぶ彼女。
様々な気持ちが拮抗していたのではないのかと思う……彼女の表情に複雑な感情の揺れがみえる。恐怖と緊張、信頼と裏切り、そして友情。

チャールズが「誰も止めなかった」という台詞で歯止めが効かなくなっていたのか、それを止めて欲しかったのか、逮捕により内心ほっとしたのかは分からない。
チャールズは犯行の動機を明かしていない。
「尊厳を守る」それだけが唯一推測を許される言葉のような気が。

犯行の動機が不明な実在人物をエディ・レッドメインがすごく巧みに演じていた。
存在を消したような佇まい、蘇生に必死なスタッフを眺めながら虚無のような表情、激高する時にみせた仕草、冷徹な殺人犯のキャラクターを決して過剰ではない(隣にいる友人のような)演技で演じていた。
彼の内に秘めた狂気もふと覗かせる瞬間とかのさり気ない目線や表情。
うまいなあ……と、感じた。

この作品は病院の隠蔽体質も描いており。
病院は慈善事業ではなく経営も重要なため、医療訴訟については神経質。
自分のところで雇ったスタッフが医療ミスを犯したとしても表沙汰(遺族が気がついていない)にならないのならあえて公表することはデメリットでしか無い、該当スタッフを解雇してしまえば済む……という悪循環しか生まない選択が結果被害者を増やすことになり。

タイトルのグッド・ナースとはエイミーのことを指すのだろうけれど、もしかしたらチャールズも含むのかも知れない。