町のカーニバルを訪れた青年が、夢遊病者を見世物にしている博士と連続殺人事件の関連性を探っていく。ドイツ表現主義の代表格として現在のクリエイターから崇められている、サイレント時代のホラー映画。
主人公の青年が、被害妄想と誇大妄想、強迫観念に苛まれていく。歪に捻じ曲がっているサイケデリック・アートが妙味を生んでおり、「脳の不思議」を巧みに利用した、サイコ・スリラーとして完成されている。
無意識下のうちに行動をコントロールさせられてしまう夢遊病者の視点、自分の可能性を試そうとする学者脳の視点など、各人物の立ち位置がしっかりとしているため、どちらにも肩入れできるという、倒錯的な鑑賞に浸ることが可能。
本作は「点」で観るのではなく、長い文脈(映画史)の「線」で観るべき作品。ナチス党が台頭する以前の、純然たるドイツ美術を堪能することができる。