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今夜、世界からこの恋が消えてもの8637のレビュー・感想・評価

3.9
原型を保てない記憶も変わらず無慈悲な記録も儚すぎる。突きつけられた現実を観客は忘れきれないまま、涙を流す。完全に消える記憶なんてない。透明になった記憶を掬う。
コロナ禍で高校生を迎えた身からすると、花火大会とか行ってるの羨ましいな...とも思った。

2年に1度くらいとんでもない学生恋愛映画を作っては、いつの日のティーンエイジャーも虜にしてきた三木孝浩監督。個人的に「思い、思われ、ふり、ふられ」がキャスト・映像的に伝説だと思っている中で、今作はあのありふれた話とは違う良い映画を観させてもらえた感じがする。その上で脚本を月川翔監督と松本花奈監督が書いているという贅沢さ。

構成としては別視点と反復が繰り返されるが、呑まれて何度も泣いてしまう。終盤は観客が道枝くんを"自分との思い出"のように回顧するという目的すら達成していた。
古川琴音の演技が自分を泣かせに来てたなぁ。松本穂香はヒロインから主人公の姉を演じるようになったのかと世代交代を感じた。

しかし高校生としてこんな映画を観ていると、進路だとか友達の恋だとか色々現実を思い出させられるな...自分が現実で叶えられない事の供養として恋愛映画を観て、そして羨ましがるんだろうな、という感情を最近分かり始めてしまった。
そしてその物語が身の回りから乖離する時、単純に映画として感動する。特にああいう"行動"が起きる映画は観ていて楽しい。
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